コラム

「経済制裁は対象国の国民を苦しめるだけで効かない」という定説は本当か?

2022年04月26日(火)17時00分
プーチン

プーチンの判断ミスでロシアは壊滅的打撃を受ける 代表撮影―RUSSIAN LOOK/AFLO

<いまだ石油で1日10億ドルの戦費を稼ぐロシア。経済制裁がそれでも効く理由>

米英とEUはロシアのウクライナ侵攻を止めるため、強力な経済制裁で圧力をかけた。これに対しロシアのプーチン大統領は、欧米の制裁は「オウンゴール」になったと反論した。

戦争は避けたいが、何かをしなければならない──1930年代以降、そう感じた大国は制裁を選択するケースが増えた。だが制裁は対象国の国民を苦しめるだけで、その国の政策を変えさせることはできない、というのが定説だ。

短期的に見れば、ロシアへの制裁もウクライナ侵攻を止められそうにない。それでもアメリカやEU、G7などが次々に発動した史上最も厳しい対ロ制裁は、まだ効果が出始めたばかりだ。

ロシアの貿易の41%はEU向けであり、その大半が制裁で止まる。ロシアの中央銀行は他の国際機関との取引を禁止され、銀行間決済ネットワークのSWIFTを介した支払いも不可能になった。ロシア経済は事実上、国際取引から排除されたことになる。

欧米はロシアの外貨準備高6000億ドルの3分の2を凍結。1914年以来のデフォルト(債務不履行)に追い込みつつある。

何百もの外国企業がロシアから撤退し、20万人が失業の危機にある。機械や製品の重要な部品は手に入らない。ロシアのGDPは2022年だけで15~20%低下する見込みだ。

中国やインドなどの「非同盟」諸国との貿易は続いているが、ロシアが失った欧米との貿易の穴は埋められない。

欧米による包括的制裁にも例外はある。石油製品だ。石油産業はロシアのGDPと輸出収入の6割を占めているが、欧州は天然ガスの45%、石油の27%をロシアに依存しているため、欧米は石油製品を制裁対象から除外した。

おかげでロシアは1日10億ドルの収入を確保し、今のところウクライナ戦争の戦費を調達できている。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story