対日関係を改善したい文在寅、歩み寄る理由がない菅義偉
G7サミットの記念撮影に臨んだ菅(2列目左端)と文(前列右端、6月12日) YONHAP NEWS/AFLO
<日本側からすれば、韓国政府が慰安婦問題と元徴用工問題を解決する行動を取らない限り、日韓関係の進展はあり得ない。それに、そもそも日韓では戦略上の優先事項が異なる>
先日イギリスで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)で日本の菅義偉首相と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の首脳会談が見送られた背景には、最近再び日韓両国間で挑発と対立が続いていたという事情があった。
G7サミット前に、韓国側は日本を刺激するような行動を少なくとも2つ取った。
1つは、東京五輪聖火リレーの地図に、韓国が領有権を主張する竹島(韓国名「独島」)が日本領として描かれていることに抗議したこと。もう1つは、その竹島の周辺で定例の軍事訓練を計画したことだ(その後、実際に訓練を実施)。
韓国政府が慰安婦問題と元徴用工問題を解決するための行動を取らない限り、日韓関係の進展はあり得ないと、菅は冷たく言い放った。
一方、韓国側にしてみれば、歴史問題をめぐる日本の謝罪は不承不承で、最小限にとどまり、不誠実に見えている。竹島に対する日本の姿勢は、日本が帝国主義的な発想を捨てていないことの表れだという。
加えて、文が東京五輪開会式に出席する意向を示すなど、韓国側の歩み寄りを日本が黙殺したという不満もある。
日韓両国の選挙が障害に?
しかし、文は日本との関係を改善したい理由がある。北朝鮮との平和路線が成果を生み出せずにいるまま、北朝鮮は核開発を続けている。
ジョー・バイデン米大統領は北朝鮮に対する厳格な抑止政策を掲げているが、これは文の融和路線と相いれない。
韓国国内での文の支持率も大幅に下落している。大統領任期満了まで1年を切った文は、対日外交で成果を上げ、5年間にわたる外交政策の停滞の埋め合わせをしたいはずだ。
それに対して、日韓両国の選挙日程を意識している菅は、差し当たり韓国との関係改善を推し進めたいと考える理由がない。
日本政府はこれまで、2015年の「慰安婦合意」のように、韓国大統領の任期の終わりに合意を結んだものの、新しい大統領によって合意を覆される経験をたびたびしてきた。
この秋には、日本の衆院選も控えている。日本の世論が韓国に対して極めて否定的であることを考えると、菅が韓国に対して冷淡な態度を取ることは日本の有権者から好意的に受け止められる可能性が高い。
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