コラム

中国への融和路線を捨てたバイデン、これからは日本が頼りに

2021年04月01日(木)17時31分
ジョー・バイデン米大統領

中国に対して融和的だと批判されていたバイデンだが KEVIN LAMARQUEーREUTERS

<バイデンはトランプ流と決別し、同盟国と協調して中国に対峙する>

マサチューセッツ州の私が住む地域でも、新型コロナウイルス・ワクチンの予防接種が始まった。それが東アジア情勢と何の関係があるのかと思うかもしれない。しかし、コロナ危機に対するバイデン政権の大規模で一貫した対応は、今後4年間に米政府がどのような政治を行うかを明確に映し出している。

バイデン政権は、一時的な衝動やかたくななイデオロギーではなく、専門家の助言と事実に基づいた実務的な政治を行うことが予想できる。状況の変化や新しい課題にもしっかり向き合おうとするだろう。その点については、私たち家族を含めワクチン接種を受けた米国民と同じように、アジアの国々も安心していい。

ジョー・バイデン大統領に対して最もよく聞かれる批判は、長い政治キャリアを通して中国への融和路線を推進してきたというものだろう。民主主義とルールに基づく国際秩序を受け入れるよう中国に促すよりも、中国の台頭を阻止することに力を注ぐべきだと、アメリカの新保守主義者(ネオコン)は主張している。

しかし、こうした見方は物事を単純化し過ぎている。80年も前に経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、「状況が変われば私は意見を変える」と語っている。

中国を「アメリカが押し戻す」

ある時期まで、中国の外交政策は国際秩序に深刻な脅威を及ぼすものではなかった。このような状況では、欧米流の規範を採用するよう中国に促すことはアメリカの国益にかなっていた。だから、米政府とバイデンは対中政策でそれを目指してきた。実際、30年ほどの間、中国の社会と経済と政治はおおむね欧米流の規範を少しずつ取り入れ、国際システムを不安定化させることなく、むしろその一員になろうとしてきた。

ところが、この10年間で事情が変わった。習近平(シー・チンピン)国家主席は次第に、攻撃的なナショナリズムに傾斜し、毛沢東主義的・全体主義的支配を復活させてきた。

そこで、バイデンも方針を変更して中国への姿勢を硬化させた。バイデン政権のアントニー・ブリンケン国務長官は最初の外国訪問先として訪れた日本で、「中国が威圧と攻撃により自国の意思を通そうとするのなら、必要に応じてアメリカが押し戻す」とはっきり述べている。

バイデン政権の発足後、アメリカのアジア政策が変わったことは明白だ。それは、日本にとっても非常に好ましいものと言える。ブリンケンとロイド・オースティン国防長官のアジア訪問ではっきり見えてきたように、米政府は再びアジアの同盟関係を重んじるようになったのだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:日米為替声明、「高市トレード」で思惑 円

ワールド

タイ次期財務相、通貨高抑制で中銀と協力 資本の動き

ビジネス

三菱自、30年度に日本販売1.5倍増へ 国内市場の

ワールド

石油需要、アジアで伸び続く=ロシア石油大手トップ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story