ワクチン接種で分かった、バイデン政権でよみがえったアメリカ
接種初日の1月18日、ジレット・スタジアムに集まった人々 Jessica Rinald-The Boston Globe/GETTY IMAGES
<トランプ政権は全くの無計画だったが、バイデン政権で接種は急ピッチで進んでいる>
84歳の義母は今年2月、米プロフットボールNFLの地元チーム、ニューイングランド・ペイトリオッツの本拠地である6万人収容のジレット・スタジアムを初めて訪れた。といっても、試合はなく、フィールドは雪に覆われていた。義母は緊張していた。ここで新型コロナウイルスワクチンの接種の1回目を受けるからだ。
私が住むマサチューセッツ州の計画では、義母はワクチン接種の対象者だ。バイデン米政権は政権発足後最初の100日間で1億回という大規模なワクチン接種プログラムを打ち出している。
トランプ前政権はワクチン接種について、全くの無計画だった。バイデン大統領が就任した1月20日の時点で、新型コロナウイルスの死者は1日当たり4000人以上、累計で40万人を超えていた。バイデンは就任初日から連邦政府の力を動員してウイルス対策に本腰を入れ、山師のやぶ医者や無能な娘婿ではなく(米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長のような)専門家に発言権を与え、米軍を動員してワクチンの配布と接種を支援した。
マサチューセッツ州では優先順位とリスクに応じて接種を受ける。フェーズ1(2020年12月~21年2月)では、まずコロナウイルス感染者を治療する医療従事者が対象で、次に他の医療従事者。フェーズ2(2月~3月)では、75歳以上の高齢者、次いで65歳以上の高齢者と高リスクの人々の介護担当者が接種対象という具合だ。
供給不足や流通の問題もあったが
スタジアムの広大な駐車場に設置された拡声器が、指定された時間に適切な入り口に向かうよう誘導していた。係員がエスカレーターの前から接種スペースまで続く長い行列にマスクを配り、互いに2メートルの距離を保つよう指示を出す。接種会場では、ずらりと並んだテーブルの前で担当者がワクチンを打ち、データを記録していた。
かかった時間は計30分ほど。義母と妻、私は、4年ぶりに見た有能で真剣で思いやりのある政府の姿に勇気づけられた。
ワクチン接種プログラムの開始からおよそ2カ月。供給不足や流通の問題もあったが、国民の16%以上が1回目の、8%以上が2回目の接種を受けた(費用は政府の負担)。今では当初の目標を超える1日当たたり平均170万回の接種が行われている。
それでも公衆衛生の専門家は、年末までにコロナ以前の社会生活に戻り始めるのは無理だろうと警告している。だが共和党が州政府を握るテキサス州やミシシッピ州は、既に感染防止策の打ち切りに動いている。
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