コラム

それでも日本は外国人労働者を大量に受け入れざるを得ない

2018年11月10日(土)13時45分

ドイツの難民収容所に到着したシリア難民の家族(16年4月) Kai Pfaffenbach-REUTERS

<ドイツのメルケル首相はシリア難民で失敗したが、少子化で若者が激減する日本に他に道はない>

ドイツのメルケル首相の退任発表は、少子高齢化問題に悩む日本の政治家にどんな教訓を与えるのか、考えてみたい。

メルケルは15年、100万人のシリア難民をドイツに受け入れる決定を下した。支持者はこれを社会的連帯の表明として歓迎。反対派は見通しの甘い文化的自殺行為と呼んだ。

その3年後、メルケルのキリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)は重要な地方選挙で相次ぎ敗北。この結果を受けて、メルケルは先週、21年の任期切れとともに首相を退任すると発表した(CDUの党首は今年末に退任の意向)。シリア難民危機がメルケル凋落の大きな要因になったことは間違いない。

一方、日本は歴史的な分岐点を迎えている。今後10~20年間、社会の高齢化問題にもっと思い切った対策が必要だ。さもなければ日本は世界の成長から取り残される。慎重な対応だけでは人口問題、ひいては経済・社会問題、そして移民問題にもうすぐ対処し切れなくなる。

日本の指導者は以前から、危機の到来を認識していた。歴代の政権は20年以上前から、慎重に少しずつ外国人労働者の受け入れ策を講じてきた。そして現在の安倍晋三首相の下で、初めて事実上の移民受け入れに舵を切った(移民という言葉はタブーのままだが)。日本国内に居住する外国人の総数は、1985年の85万人から今では250万人に増えている。

日本の伝統的な外国人恐怖症を考えれば、政府はこれ以上踏み込めなかった。だが中途半端な対策では、迫り来る危機にほとんど対処できない。

抵抗感はいずれ解消する

15~64歳の生産年齢人口は、10年の8170万から30年には6875万に減る。年齢の中央値は12年の45歳から30年には52歳に伸び、世界で最も高くなる。

19歳以下の若者は10年から30年までに600万人減り、全人口に占める比率は15%まで低下する。その結果、年金受給者を支える働き手が足りなくなり、国の財政がひっ迫する。1人当たりの生産性は他国に劣後し、経済成長率も低下する。

ドイツが全人口の約5%を占めるトルコ系住民の400万人の同化に四苦八苦しているのはよく知られた話だ。この事実とメルケルの運命を見れば、日本が外国人の受け入れに警戒心を抱くのもやむを得ないかもしれない。

だがドイツの移民政策には、初期段階で決定的な誤りがあった。トルコ系移民を社会に統合するのではなく、何十年も孤立させていたことだ。

歴史を振り返れば、外国人移民の大規模な流入は一定のパターンをたどる場合が多い。第1世代の移民はずっと「異邦人」のままだが、第2世代は両親の文化と自分が育った国の文化の両方に慣れ親しむ。そして第3世代になると、育った国の文化と完全に同化する。

移民が受け入れ国のGDP拡大に貢献することは間違いない。移民に対する文化的抵抗感は、教育やさまざまな経験の共有を通じて親近感が増すにつれて、次第に消えていくものだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米政権が刑事訴追警告とパウエル氏、利下げ圧力強化の

ワールド

米、重要鉱物の中国依存巡り迅速な対策要請へ G7な

ワールド

イラン抗議デモで死者500人超、トランプ氏「強力な

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ石油収入の差し押さえ阻止へ大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 10
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story