それでも日本は外国人労働者を大量に受け入れざるを得ない
ドイツの難民収容所に到着したシリア難民の家族(16年4月) Kai Pfaffenbach-REUTERS
<ドイツのメルケル首相はシリア難民で失敗したが、少子化で若者が激減する日本に他に道はない>
ドイツのメルケル首相の退任発表は、少子高齢化問題に悩む日本の政治家にどんな教訓を与えるのか、考えてみたい。
メルケルは15年、100万人のシリア難民をドイツに受け入れる決定を下した。支持者はこれを社会的連帯の表明として歓迎。反対派は見通しの甘い文化的自殺行為と呼んだ。
その3年後、メルケルのキリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)は重要な地方選挙で相次ぎ敗北。この結果を受けて、メルケルは先週、21年の任期切れとともに首相を退任すると発表した(CDUの党首は今年末に退任の意向)。シリア難民危機がメルケル凋落の大きな要因になったことは間違いない。
一方、日本は歴史的な分岐点を迎えている。今後10~20年間、社会の高齢化問題にもっと思い切った対策が必要だ。さもなければ日本は世界の成長から取り残される。慎重な対応だけでは人口問題、ひいては経済・社会問題、そして移民問題にもうすぐ対処し切れなくなる。
日本の指導者は以前から、危機の到来を認識していた。歴代の政権は20年以上前から、慎重に少しずつ外国人労働者の受け入れ策を講じてきた。そして現在の安倍晋三首相の下で、初めて事実上の移民受け入れに舵を切った(移民という言葉はタブーのままだが)。日本国内に居住する外国人の総数は、1985年の85万人から今では250万人に増えている。
日本の伝統的な外国人恐怖症を考えれば、政府はこれ以上踏み込めなかった。だが中途半端な対策では、迫り来る危機にほとんど対処できない。
抵抗感はいずれ解消する
15~64歳の生産年齢人口は、10年の8170万から30年には6875万に減る。年齢の中央値は12年の45歳から30年には52歳に伸び、世界で最も高くなる。
19歳以下の若者は10年から30年までに600万人減り、全人口に占める比率は15%まで低下する。その結果、年金受給者を支える働き手が足りなくなり、国の財政がひっ迫する。1人当たりの生産性は他国に劣後し、経済成長率も低下する。
ドイツが全人口の約5%を占めるトルコ系住民の400万人の同化に四苦八苦しているのはよく知られた話だ。この事実とメルケルの運命を見れば、日本が外国人の受け入れに警戒心を抱くのもやむを得ないかもしれない。
だがドイツの移民政策には、初期段階で決定的な誤りがあった。トルコ系移民を社会に統合するのではなく、何十年も孤立させていたことだ。
歴史を振り返れば、外国人移民の大規模な流入は一定のパターンをたどる場合が多い。第1世代の移民はずっと「異邦人」のままだが、第2世代は両親の文化と自分が育った国の文化の両方に慣れ親しむ。そして第3世代になると、育った国の文化と完全に同化する。
移民が受け入れ国のGDP拡大に貢献することは間違いない。移民に対する文化的抵抗感は、教育やさまざまな経験の共有を通じて親近感が増すにつれて、次第に消えていくものだ。
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