インバウンド再開で日本経済に期待大。だが訪日中国人がいま少ないのは「良いこと」
一方の三宅氏はサービス産業に注目する。
「日本経済はサービス経済化により、サービス関連産業の就業者数の割合が高くなっている。コロナ禍で最も大きな打撃を受け、日本経済が停滞した主要因はサービス産業の悪化。インバウンドの再開、拡大によってメリットを受け、復活の大きな原動力になるのもまたサービス産業だ。家計の給与、労働機会の拡大、所得の拡大に対してインバウンドは大きな影響を与えると思う」
さらに藤野氏と三宅氏は、良いサービスや製品を提供できる会社は円安メリットを受けていると話す。海外からのインバウンド客にとって、今の日本でサービスや商品を買うことは大バーゲンセールのようなもので、貿易収支赤字の対応に有効とされる。
円安のメリットについては、インバウンドに限らない。欧米でインフレ抑制のための金融引き締めが進むなか、日本の安い商品が入ってくることはマイナスにはならず、「90年代のような貿易摩擦が生じにくい」と藤野氏は指摘する。
「モノを作って売る日本の企業にとっては、千載一遇のチャンスだ」
インバウンドには期待大だが、突発的な事態も想定すべき
以上を踏まえて、2023年の日本経済の見通しを天気図になぞらえて予想する両名。三宅氏は「前半は雨模様もある曇り空、後半は期待も含めて晴れ予想」。
2022年の株式市場は金利が上がり、株式市場全体が大きく低迷した。今年はいよいよアメリカの物価が落ち着き、利上げが終わるとの見方が強い。「場合によれば、後半に利下げがあるかもしれない。株式市場にとって明るい話題になるのではないか」と、三宅氏は言う。
藤野氏の予想は、「晴れ時々雷」。金利状況、インバウンド景気の回復、円安メリットなどで、相対的に世界の中で日本は良い位置にいると藤野氏は考えている。しかし、ウクライナ・ショックのように、突発的な政治・軍事・経済のリスクに晒される可能性は今後も捨てきれない。
「世界の経済はつながっているので、日本も影響を受けることは免れない。何が来るかは予測できないので、思わぬ事態を想定する必要がある」
インバウンドによる消費拡大は、回復が遅れていた内需の火付け役になる可能性がある。日本経済の活性化に期待しつつも、引き続き地政学的リスクに警戒しよう。
構成・酒井理恵
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