コラム

フェースブックから犬より下に扱われた安替

2011年03月10日(木)16時33分

ファンページを作ってもらったザッカーバーグの子犬

かわいきゃいいの? ファンページを作ってもらったザッカーバーグの子犬


 中国人ジャーナリストで政治ブロガーの安替(マイケル・アンティ)は1月、フェースブックのアカウントを閉鎖された。同社の担当者が安替に語ったその理由とは、「フェースブックは偽名を認めない方針を徹底している。アカウントを再開したければ、ペンネームのマイケル・アンティではなく、中国名のチャオ・チンを使わなくてはならない」。

 その直後、安替は知ってしまった。フェースブックの創業者マーク・ザッカーバーグが最近飼い始めたハンガリアン・シープドッグの子犬「ビースト」が、フェースブック上にプロフィールのページを開設したことを。カンカンになるのも無理はない。以下はAP通信の記事から。


 ケンブリッジ大学とハーバード大学の両方からジャーナリズムの奨学金を受けたこともある安替が、フェースブックにアカウントを作ったのは07年のこと。そのアカウントが使えなくなって、彼を安替として知る1000人以上の学者や専門家との連絡手段を絶たれてしまった、と彼は言う。

「本当に腹が立つ。中国名では仕事にならない。そして今日、ザッカーバーグの犬がフェースブックのアカウントをもっているのを見つけたんだ。僕のジャーナリストとしての仕事や研究は、犬よりリアルなはずだ」

 サッカーバーグは最近、子犬ビーストの「Facebookページ(旧ファンページ)」を開設した。プロフィールも写真も入って普通の個人向けのプロフィール・ページと同じようだが、「Facebookページ」には実名原則は適用されない。なぜならFacebookページは、企業やブランドや有名人がファンを集め、ファンと交流するための専用ページだから。

 フェースブックは個々のアカウントについてコメントはしないとしながらも、「実名主義」はより責任感があり安全かつ安心なソーシャル・ネットワーキング環境を作るために役立つと付け加えた。


 かわいい犬はさておいて、実名主義についてのフェースブックの説明はいんちき臭い。私自身のフェースブックの友達リストを見ても、偽名やニックネームを使っている人は10人以上いる。しかも安替は、安替の名で知られた有名人だ。彼は何年もこのペンネームで記事を書いており、ツイッターでは36000人のフォロワーがいる。

 安替のアカウント閉鎖は、ザッカーバーグが「休暇」と称して中国のインターネット企業数社を訪問した1カ月後に行われた。中国でのビジネスをうまく運ぶため、安替のように中国政府に批判的なジャーナリスト外しを始めたのでなければいいが。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年03月09日(水)13時49分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 10/3/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story