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ForeignPolicy.com 外交エディター24時
日本男子衰退論は怪しい
Yuriko Nakao-Reuters
先日、ワシントン・ポスト紙が日本の「草食系男子」についての記事を掲載した。一日14時間も働き、帰り道に酒をあおる生活よりも、友達とつるんでショッピングを楽しむほうがいいと考える若者が増えているというニュースは、アメリカのメディアで最近増え続けている「日本衰退物語」の最新事例だ。
専門家の話によると、20〜34歳の日本人男性が妙な反乱を起こしている。彼らは80年代のバブル期のような週70時間の長時間労働や、見栄を張るため消費する風潮に背を向けている。大卒者の就職氷河期が続いているが、単なる就職難以上に大きな問題が潜んでいると指摘する専門家が増えている。最近の若い男の子は自分のやりたいことがわからない世代なのだ。
日本はかつて、一つの会社に人生を捧げる企業戦士に支えられて経済成長を遂げた。彼らは暗い色のスーツを着て、退社後も同僚と酒を飲み交わし、家族とほとんど顔を合わせないことも珍しくなかった。
だが最近、仕事に生きがいを見出す従来の働き方は崩壊したという認識が政財界に広がっている。経済は活力を失い、国家への高らかな誇りは国の先行きへの不安に取って変わられた。その結果、若者世代は「会社のために自分を犠牲にする意欲」を失ったと、『近代日本』の近著があるテンプル大学のジェフ・キングストン教授は言う。「ある意味で日本の解体が始まっている今、若者は従来のパラダイムが通用しないと気付いているが、今後の展開について確信があるわけでもない」
アトランティック・マンスリー誌のジェームズ・ファローズやフィナンシャル・タイムズ紙のギデオン・ラッチマンも指摘しているように、こうした日本衰退論にはいくつもの誤りがある。第一に、日本は今も極めて裕福な国だ。ファローズは10月中旬にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された日本への「追悼」記事に対して、次のように反論した。
中国に抜かれたとはいえ、日本のGDP(国内総生産)はわずか数カ月前までアメリカに次ぐ世界第2位だった。国民一人当たりの国民総生産や個人資産は、今も中国の10倍近い。
■スキニージーンズ指数によると...
超細身のスキニージーンズをはいた覇気のない若者が増えている点について、ファローズは「その現象が日本経済の崩壊の結果なのかわからない」としている。確かに、ニューヨーク・タイムズの別の記事によれば、経済成長著しい中国の若者の間でも細身のパンツが流行しているらしい。
第2に、日本の若い男性が「家族と過ごしたり趣味を楽しむ時間をもてるバランスの取れた生活を望んでいる」という事実は、日本がそれなりに順調であることの指標だと思う。冒頭のワシントン・ポストの記事と合わせて、アメリカの20代の若者が大人になれない風潮をリポートしたニューヨーク・タイムズ紙の記事を読むと興味深い。アメリカの若者も豊かな社会に育っており、全く働かなかったり、アルバイトで暮らすライフスタイルを選ぶことができる。
地球上に暮らす人の大半、そして70〜80年代に日本を支えた人々の大半は、大阪の街でラテアート(カプチーノの泡の表面に模様を描くアート)を楽しむいまどきの若者を見て、恵まれていると思うだろう。
国がどの程度まで豊かになると、周囲をイラつかせる細身パンツのサブカルチャーが生まれるのか。そこには一定の相関関係がありそうだ。「スキニージーンズ指数」と名付けて研究してみるといい。
――ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年10月26日(火)11時16分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport", 27/10/2010. © 2010 by The Washington Post Company.
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