コラム

日本の女性たちよ「女子マネ」を卒業しよう

2013年04月01日(月)10時00分

今週のコラムニスト:クォン・ヨンソク

[3月26日号掲載]

 韓国で朴槿恵(パク・クンヘ)政権が本格的に始動した。北朝鮮はこれまでにない強気の姿勢で新政権の門出を揺さぶっている。まるでミリタリー文化に染まったマッチョな男たちが、女性大統領の機先を制しようと「脅し」をかけているようにも見える。

 今回の大統領選で画期的だったのは、テレビ討論に参加した3人の候補のうち2人が女性だったことだ。このうち野党・統合進歩党の李正姫(イ・ジョンヒ)候補が朴に猛攻撃を仕掛けたことが、結果的に保守層の結束を促したと言われている。実際、60代の僕の義母は生まれて初めて大統領選の投票に行ったそうだが、その理由は李の「無礼さ」が許せず「かわいそうな」朴を応援するためだった。

 このように朴政権の誕生は、女性が歴史を動かす象徴的な事件だった。それは「めんどりが鳴けば家門が滅びる」と言われるような男尊女卑の考えが根強い韓国社会では大きな意味のあることだ。

 では日本はどうだろう? 女性は元気でスポーツや文化、芸術の分野で輝いているが、政治や経済の世界では相変わらず背広を着た「男子」たちの宴が続いている。自民党は意識的に女性議員を重要ポストに登用しているが、目立つのは男に勝るとも劣らない「右派女性」議員だ。

 OECD(経済協力開発機構)の報告書によれば、労働市場の男女平等が実現すれば、今後20年で日本のGDPは20%増加するという。女性の力を国力に変えるという発想は妥当だろう。「眠れる資源」といわれる女性労働力を活用すれば、日本再生に新たな可能性が広がるはずだ。

■議員の9割が男性という現実

 大学でも優秀な女子学生は多い。この春、一橋大学を首席で卒業した僕のゼミ生もやはり女性だ。女子学生は単に勉強ができるだけでなく、問題意識や品性も兼ね備えている場合が多い(もちろん男子でもいい学生はいるが)。しかしそんな女性が社会に出てから男性と同等の地位と可能性を得られないとしたら、それはおかしいし、とてももったいない。

 しかも日本の女性は世界で評判がいい。いつも笑顔でオシャレで知的、そして優しくて礼儀正しいし相手の気持ちをおもんばかることができる。日本の女性がフルに「女子力」を発揮すれば、日本のソフトパワーは確実に増大するだろう。

 韓国には朝鮮王朝を舞台に女性の権力闘争を描いた『女人天下』という人気テレビドラマがある。僕は日本版の「新女人天下」で生きてみたい。女性の社会進出は女性だけでなく、結果として男性も解放することになる。それにはまず女性議員の数を増やすべきだろう。国会議員のおよそ9割が男性というのは、つまり国民の意思がきちんと反映されていないということだ。インフレ目標だけでなく女性議員の数値目標も掲げたほうがいい。

 さらに社会全般でこの動きを加速していくことが必要だ。20世紀型の「鉄の女」ではなく、今後は普通の女性が育児と仕事を両立させることがもっと当たり前になるはずだ。女性に仕事か子育てかの選択を迫る社会はおかしい。

 なぜ日本や韓国は欧米に比べて女性の社会進出が進まないのか。その根底には「男女有別」という儒教的な考え方がある。特に女性の意識改革も必要だ。女子学生たちよ、もう体育会の「女子マネジャー」なんてやめよう。男をサポートする役割を女性自らが卒業しないと、男性の既得権益は切り崩せない。

 これまでの人類の歴史では、基本的に男性中心の社会が続いてきた。だから女性中心の社会のイメージはなかなか湧いてこないかもしれない。もし今後100年くらい女性の時代が続いたら、世の中はどう変わるだろうか? 僕は残された余生を女性中心の世界で生きてみたい。ピンク・レディーのヒット曲「UFO」ではないが、近頃「地球の男(社会)に飽きたところ」だ!

プロフィール

東京に住む外国人によるリレーコラム

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・李小牧(歌舞伎町案内人)
・クォン・ヨンソク(一橋大学准教授)
・レジス・アルノー(仏フィガロ紙記者)
・ジャレド・ブレイタマン(デザイン人類学者)
・アズビー・ブラウン(金沢工業大学准教授)
・コリン・ジョイス(フリージャーナリスト)
・ジェームズ・ファーラー(上智大学教授)

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