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コラム
池上彰Newsweek斜め読み
「お祭り騒ぎ」はテレビの速報も
11月6日夜のニューヨーク・タイムズスクウェア。「オバマが大統領選挙人274人を獲得」とテレビが速報した瞬間、地鳴りのような歓声が上がりました。270人が過半数ラインなので、要するに「当選確実」というわけです。車から身を乗り出して、「オバマ、オバマ」と熱狂する人たちもいました。ニューヨーク市民にはオバマファンが多いのです。
当確が出たとき、時差の関係でハワイ州では、まだ投票が続いていました。
投票締め切りは午後7時。東部の州で投票が締め切られても、中部や西部ではまだ投票中。それでも、投票が締め切られた東部の州に関しては、テレビ各局が、次々に「オバマ勝利」「ロムニー勝利」と速報していきます。中部や西部への配慮などないのですね。ネットワークテレビの本社は東部のニューヨークだからでしょうか。
でも、この時点でどちらかの候補が圧倒的なリードを保ったら、中部や西部の有権者の投票行動に影響を与えてしまうのではないでしょうか。
などと考えてしまうのは、私が長らく日本のテレビ報道に携わってきたからでしょうか。アメリカのテレビ局は、そんな配慮などせずに報道するのですね。
アメリカは選挙がお祭り騒ぎと称せられますが、これはテレビの開票速報番組も同じです。
NBCは、ロックフェラーセンタービルを開票速報ボードにしてしまいました。ビルの途中に「270」の数字があり、共和党の赤、民主党の青の柱が高くなっていき、どちらが270に到達するか、という形で開票状況を伝えました。
CNNは、エンパイアステートビルを速報ボードにしたのですから、さらに先に行きます。ビルの先端の塔を赤と青のライトで照らして結果を知らせます。オバマが勝つと、ビルの上部全体が青くなり、「民主党勝利」を知らせました。
こうした速報をするためには、各州で出口調査をする必要があります。でも、そのための費用は膨大。そこで、テレビ各局が共同組織を結成して調査を実施。結果を各局で共有する形をとりました。それでも、当確速報には差が出ましたから、各局が独自の分析を加味しているのですね。
CBSもABCもFOXも、スタジオには男女のキャスター(アンカー)以外に政治コンサルタントや政治アナリストが並び、コメントしていきます。
でも、どこかの国のテレビ番組のようにお笑いタレントが出てくることはありません。政治のプロだけで政治を語るのです。
大統領選挙中、オバマ陣営もロムニー陣営も、大量のテレビコマーシャルを流しました。テレビ各局には選挙特需です。それだけ利益が上がっているのだから、大掛かりなお祭り騒ぎになってしまうのですね。
選挙が始まると熱狂するのは、支持者ばかりではない。この点では日米の違いがありません。
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