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コラム
池上彰Newsweek斜め読み
タリバン指導者オマルはどこに?
アメリカのオバマ大統領は、イラクから米軍を撤退させる一方、アフガニスタンには戦力を増強しています。イラク戦争は「間違った戦争」だが、アフガニスタンの安定は「テロとの戦い」のために重要だと考えているからです。
しかし、アフガニスタンで米軍はタリバンの攻勢に手を焼いています。米軍の犠牲者は増えるばかり。新聞やテレビは、タリバンの勢力伸張を強調します。
ところが、タリバンの組織の結束と規律が揺らいでいる、と指摘するのが、本誌日本版8月25日号の『タリバンを脅かす「消えた指導者ショー」』という記事です。
何かをもじったのでしょうが、意味不明のタイトルです。要するに、タリバンの指導者が姿を消したままだという話です。
タリバンの最高指導者といえば、ムハマド・オマル。オサマ・ビンラディンではないですから、お間違いなく。ビンラディンは、母国サウジアラビアを追われて、かつてソ連軍と戦った仲間たちがいるアフガニスタンに逃げ込み、タリバンの客人になった後、国際テロ組織「アルカイダ」を結成しました。
ビンラディンがアメリカに対する同時多発テロを実行したとして、アメリカはビンラディンの身柄引き渡しをタリバンに要求。タリバンが拒否したため、ブッシュ政権のアメリカはタリバンを攻撃しました。
タリバンを率いてきたのは、ほとんど映像も残されていない、謎の人物オマルです。
アメリカの攻撃以降、ビンラディンもオマルも、姿を消しました。その後、ビンラディンは、時折り肉声のメッセージを発表して健在ぶりをアピールしていますが、オマルの消息はつかめていません。オマルが健在だという噂は流れるけれど、それを裏付ける確証がまったくないというのです。
このため、「今や、オマルの名前で発せられる命令はほぼことごとく、疑いの目で見られる」のだそうです。
「1年半前、パキスタン領内のタリバン勢力に対して、パキスタン軍を攻撃するのをやめて、アフガニスタン駐留米軍を標的にするよう命じる文書が出回った。この文書はオマルの署名入りとされていたが、タリバン内には、パキスタン軍の情報機関である軍統合情報局(ISI)による捏造を疑う人も多い」とのこと。
オマルの存在が不明なまま、オマルの副官が拘束され、タリバン勢力には「リーダーシップの真空状態」が発生しているというのです。
タリバン復活のニュースばかりが伝えられる中で、こうした情報は貴重です。
オマルは、そもそも生きているのか? ひょっとして、武田信玄の最期のような隠蔽が行なわれているのか。だとしたら、誰が指導者なのか。謎は深まります。こんな謎を提示してくれる貴重な記事が読めるのも、この雑誌の魅力です。
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