コラム

オバマが「トレッキー」だったとは

2009年05月26日(火)16時21分

アメリカの『ニューズウィーク』は、5月から大幅に衣替え。ストレートニュースよりもニュースの分析に重点を移す編集方針になりました。『ニューズウィーク』の読者だったら、ニュースそのものは知っているだろうという前提で解説や分析を増やすというわけです。

では、日本版はどう変わるのか、と興味津々だったのですが、とりあえずは大きな変化はないようです。今後どのように変化していくのか、見逃せません。

『ニューズウィーク』としては、リニューアル第1号に大きなネタが欲しいところ。それが、「オバマ、オバマを語る」(日本版5月27日号)です。さすが『ニューズウィーク』。大統領の専用機に同乗して、単独インタビューを実現しています。

ここでの新情報は、オバマがケーブルテレビのニュースを見ないということ。CNNもFOXニュースも、担当者やキャスターはがっかりでしょう。「最近見ているテレビはスポーツだけ」という発言には、「最近のテレビは面白くない」という無言のメッセージを感じます。

前任者はまったく読書をしなかったことで有名ですが、オバマは読書家として知られています。「どうやって読書の時間をつくっているのか?」という質問は、まさに読者が知りたいこと。いつ読書するのか、いまどんな本を読んでいるのか知りたい方は、本誌をどうぞ。

インタビューでの新発見は、オバマが「トレッキー」だったことです。ちなみにトレッキーとは、テレビドラマシリーズ(劇場版映画もある)「スター・トレック」のファンのこと。オバマが子どもの頃から、このドラマを見ていたとは!

オバマのことは「ミスタースポック」と呼ばれていることも、今回初めて知りました。常に合理的に行動し、感情を決して表に出さないバルカン星人として登場するのがスポック。大きな耳が特徴で、言われてみれば、なるほど......。

「スター・トレックとはなんじゃい?」という人には、同誌映画欄の「なんてったってスター・トレック!」という特集記事がお勧めです。

 ここでは、ブッシュ前政権の幹部たちが映画「スター・ウォーズ」の配役に、オバマ政権の幹部たちが「スター・トレック」の配役に擬せられています。これには笑えました。チェイニー副大統領が銀河帝国皇帝とは納得、です。

ただ、ひとつ不満は、日系の「スールー操舵士」(日系3世の俳優タケイが演じる)が出てこないことです。もし選ぶとすれば、退役軍人省の長官になったエリック・シンセキでしょうかねえ。

 政治とテレビドラマ(映画)をダブらせて語ることができる。これは、『ニューズウィーク』が優れているからなのか、そもそも哲学のあるテレビドラマ(映画)を制作できるアメリカの底力なのか。

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で一時9カ月半ぶり高値、高市

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

トランプ氏支持率、2期目最低 生活費高やエプスタイ

ワールド

トランプ氏、サウジ皇太子と会談 F35売却と表明 
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story