- HOME
- コラム
- エコノMIX異論正論
- 【ウェブ対談:池田信夫×冷泉彰彦】慰安婦問題の本質…
【ウェブ対談:池田信夫×冷泉彰彦】慰安婦問題の本質とは何か<1>
冷泉 その経緯はある程度、アメリカにも伝わっています。それでもわからないのは、人身売買の対象になって管理売春をさせられ、大変な人生を経験した女性がいる。そういう女性たちが複数いるのに、なぜ今になって「強制連行」ではなく民間ベースの不幸な事例だと認定して、日本人のプライドを満足させられるのか、ということ。どうしてそういう修正をしたいのか。
日本の世論というか現政権の中にも、「強制を否定」することで、日本の過去の名誉回復もできるし、自分たちの名誉回復もできる、朝日新聞の誤報で自分たちの人権が侵されているみたいな認識が広がっていますよね。
池田 日本人も誤解しているんですよ。名誉とかはそもそも関係なく、これは戦後補償の問題です。もしかして日本軍の戦争犯罪があったかもしれない、ということでメディアが取材し、92年ごろまでは「本当かもしれない」と思われていた。ところが吉田が「嘘でございます」と言った瞬間に、この話は終わったんですよ。
もちろん道義的な責任はありますよ。そこを日本側も「名誉の問題」にして、ナショナリズムに訴える形で日本の体面を保とうとした。それがかえって、韓国のナショナリズムを刺激して、どんどん脱線してしまった。
冷泉 その経緯が大事ですよね。
池田 外務省も認識は同じで、93年の段階でもう「強制連行」はないと判明したので、あの「河野談話」が出た。日本側としては、日韓条約で解決しているけれども相手のお気持ちもわかるので示談金を出します、というスタンス。韓国側も、もう賠償問題にはしません、ということで外交上の手打ちにした。
要するに戦後補償と外交の問題です。これは朝日の元記者の下村満子さん(95年設立のアジア女性基金の理事も務めた)もまったく同じ意見です。ところが、朝日の中におかしな強硬派がいて、「示談金じゃダメだから国家賠償をしろ」と言い出した。
冷泉 右派は右派で、戦前の名誉回復にこだわるし、左派は左派で、戦前のことに関して国家賠償しろと言うし。右派も左派も戦前とつながっている日本にしたいのか、と理解不能になりますよ。
池田 だから両方とも誤解している。
この筆者のコラム
いま必要なのは途上国型の「戦時レジーム」の清算だ 2015.07.30
中国の軍事的膨張で変容する太平洋の秩序 2015.07.23
挫折した反安保法案デモの「アカシアの雨」 2015.07.16
「霞ヶ関文学」で書かれたSF小説「骨太の方針」 2015.07.09
問題は言論弾圧ではなく「メディアの歪んだアジェンダ設定」だ 2015.07.02
文科省が打ち出した「文系大学はもういらない」の衝撃 2015.06.25
黒田総裁は「平成の高橋是清」になるのか 2015.06.18