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コラム
池田信夫エコノMIX異論正論
百家争鳴の「第三極」で参院選はおもしろくなるか
鳩山内閣の支持率が30%代に落ちる一方、自民党の支持率も低迷する中で、みんなの党が「野党第二党」に浮上している。各メディアの世論調査では支持率で公明党を抜き、「参院選の比例代表の投票先」として10%を超えるようになった。渡辺喜美代表は選挙区でも候補者擁立を進め、「合計20人以上は候補を立てる」との方針を示している。
他方、自民党内でも舛添要一氏や与謝野馨氏が新党結成に言及し、鳩山邦夫氏が離党するなど、谷垣総裁の求心力低下が目立つ。こうした勢力は「第三極」として結集し、民主・自民を脅かす勢力になるだろうか。
まず問題外なのは、総務相だったとき「かんぽの宿」の一括売却に異を唱えるなど、郵政民営化に反対の立場をとる鳩山邦夫氏で、みんなの党からも自民党内の批判派からも相手にされていない。与謝野氏も、財政再建のために増税するかどうかで渡辺氏と対立したので、合流することはむずかしいだろう。
この他にも舛添氏が会長をつとめる「経済戦略研究会」には、前の自民党総裁選に立候補した河野太郎氏がいる。彼は渡辺氏から「自民党は清算会社にして新会社でやろう」と呼びかけられているが、離党する気は今のところないようだ。夏の参院選で自民党が惨敗し、谷垣総裁が退陣したら「次」をねらおうという戦術らしい。同じグループには中川秀直氏もいるが、彼は比例代表なので、みんなの党には移籍できない(新党を結成すれば移れる)。
・・・というわけで、政局的にはみんな動きにくいが、もっと大きな問題は彼らの掲げる経済政策がバラバラで、既存政党に代わる方向性が見えないことだ。「財政タカ派」の与謝野氏と「上げ潮派」の中川氏が合流することは考えにくい。他方、みんなの党のマニフェストは増税にも言及せず、日銀がお金をばらまけば景気が回復し、「埋蔵金」を取り崩せば財政が再建できるといった夢物語が描かれている。
ただ多くの政治家の共通点は、民主党の「大きな政府」路線、とりわけバラマキ福祉政策が財政的に破綻すると予想し、「小さな政府」をめざす方向を打ち出していることだ。しかしこの点も、小泉改革の継承を明言する中川氏から「小泉改革は財務省支配だった」と批判する渡辺氏まで温度差がある。長期的な成長戦略についても、環境とか福祉とかいったありきたりの産業政策が並んでいるだけだ。
実は「第一党」は民主党ではない。どの世論調査でも、ほぼ半数を占める圧倒的な多数派は「支持政党なし」である。特に昨年、民主党政権ができたときは民主党支持に回った無党派層が離れ、それが支持政党なしとみんなの党に分散している。要するに、第三極は「消去法」で選ばれているだけなのだ。「望ましいリーダー」のトップに挙げられる舛添氏も、「今の自民党は駄目だ」というだけで、政治理念も経済政策もはっきりしない。
しかし各種の世論調査では、参院選で民主党が半数を大幅に割り込むという予測が多いので、第三極が大きな勢力になれば、民主党が社民党・国民新党を切って第三極と連立を組む可能性もある。そうなれば、今の国民新党が民主党政権を振り回しているように、「小さな政府」派が一定の発言力をもつ可能性もある。まともな政策もリーダーも不在の参院選は不毛の選択だが、最大多数の無党派層にとっては民主党になるべく大敗してもらうことが望ましいのかもしれない。
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