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コラム
池田信夫エコノMIX異論正論
民主党は自民党の改革に学べ
鳩山首相が、1月4日に開かれた財界の新年会で「みなさんは供給サイドだが、われわれは需要サイドを中心にやっていきたい」とあいさつし、会場には白けた雰囲気が流れたそうだ。このように自民党政治を「供給サイド」と批判し、民主党は「需要サイド」でやってゆく、という話は菅直人副総理がよく言っており、民主党の「国家戦略」らしいが、意味がよくわからない。
昨年末にまとめられた新成長戦略(基本方針)も「2020 年までに環境、健康、観光の3分野で100 兆円超の『新たな需要の創造』により雇用を生む」とうたい上げるが、本文を読むと「電力の固定価格買取制度の拡充による再生可能エネルギーの普及」とか「バリアフリー住宅の供給促進」など、昔ながらの供給支援の補助金が並んでいる。こういう政策は麻生内閣のまとめた成長戦略にも入っており、中身はほとんど変わらない。
自民党の経済政策が公共事業や補助金で「産業振興」を行なうバラマキに片寄っており、それを消費者の目で見直そうという意図は悪くないが、具体的な政策がともなっていない。それは政策の部分を各省庁にまかせているからで、官僚は産業振興しか知らないので、需要サイドといわれても書きようがないのだ。
実はこういう議論は、今度が初めてではない。1997年に橋本内閣の行政改革会議が出した中間報告では「発展途上国型の産業振興を市場原理を中心に据えた経済運営に転換する」という理念が打ち出されたが、これは官僚の抵抗で骨抜きになり、省庁再編は省庁を丸ごと合併して看板をかけかえただけに終わってしまった。それを部分的に実行したのが、小泉改革だった。「官邸の機能強化」とか「政治主導」というのも橋本内閣が打ち出し、小泉内閣で実施された方針である。
要するに、いま民主党がやろうとしているような改革は、自民党政権でも試みられたのだ。それなのに鳩山政権は、小泉改革を「市場原理主義」として否定したため「産業振興から市場原理へ」という理念が打ち出せず、「供給から需要へ」という訳のわからないスローガンになってしまった。今度、国家戦略局担当相になる仙谷由人氏は菅氏より柔軟なので、野党時代の経緯にこだわらず、自民党の試みた改革の失敗に学び、その教訓を継承してはどうだろうか。橋本行革の事務局にいた松井孝治氏が、官房副長官として政権の中枢にいるのだから。
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