中国経済が元気だ。上海総合指数は年初から5割近く上がり、昨年6月ごろの水準に戻った。かつて「先進国と新興国は別の経済なので、欧米の成長が鈍化しても新興国はあまり影響を受けない」という「デカップリング論」があったが、今回の世界不況で誤りだったとされた。しかしここにきて、特に中国が力強い立ち直りをみせており、「やはりデカップリングは正しかった」といわれはじめた。


 他方、日経平均株価はようやく年初の水準に戻した程度。「中国は大型の公共事業で景気回復したので、もっと財政出動すべきだ」という意見もあるが、これは間違いである。たとえば中国の下水道普及率は20%以下といわれており、日本並みの80%に引き上げるだけでも、広い国土では莫大な公共投資が必要になる。日本でも1960年代までは、公共投資の社会的な収益率は企業より高いといわれていた。


 しかし現在の日本では、財政支出の乗数効果(国民所得への波及効果の倍率)は1以下だともいわれている。この原因は、いわゆるハコモノが全国に行き渡ってしまい、新しい投資をしても民間の経済活動を刺激する効果がないからだ。今回の補正予算でも中小企業の資金繰り支援や雇用対策などがメインで、46の基金に使途不明の4兆3000億円を拠出するなど、13兆9000億円もの巨額の予算を持て余しているようにみえる。


 政府が民間を引っ張る「開発主義」とよばれる政策は、途上国のようにインフラが不足し、投資の目標がわかりやすい経済では有効だが、日本のように社会資本が整備され、今後の方向がはっきりしない先進国では、無駄づかいに終わりやすい。ここでは政府ではなく、民間企業が自分のリスクでイノベーションを実現するしかない。そのために必要なのは、既存の企業の資金繰りを助けることではなく、新しい企業の参入を妨げている規制を撤廃することだ。


 世界経済は、成熟した先進国と成長する新興国の二つにデカップルされており、それぞれでとるべき政策はまったく違う。日本は30年以上前に「新興国」を卒業したのに、いまだに中国やインドと同じように政府が民間をリードする開発主義の発想が抜けない。それが日本の元気をなくしている最大の原因なのである。