コラム

自由に書いたらダメ? 米国留学や就活に備えSNSの発言に悩む韓国の人びと

2017年09月22日(金)20時31分

newsweek_20170922_205508.jpg

本人に代わってネット上への投稿などを削除する「デジタル葬儀社」 (c) TV Chosun

韓国メディアによると、「デジタル葬儀社」*に依頼して子供が作ったIDでネット上に書き込んだものを全て探しだして削除してもらったり、親が子供の名前でTwitterやFacebookに登録して入試でいい点数が取れそうなことを書き続けたり、子供の米国留学のためなら時間とお金を惜しまない親が少なくないという。
*個人の不要なインターネット上の履歴や、亡くなった人のインターネット上の投稿や足跡を削除する会社。「デジタルランドリー」とも呼ばれ、アメリカでは2012年ごろから、韓国では2013年ごろからサービスを提供する会社が現れた

ロイター通信の伝えるところでは、SNSは米国の大学入学だけでなく政府のビザ発給にも影響を与えるようだ。米国国土安全保障省は5月末からビザ発給の審査を厳格にするとして、申請者が過去5年間使っていたSNSのIDを届け出るように決定した。SNSの中身も審査対象というわけだ。

同省は国家の安全保障のため審査の厳格化が必要という立場で、「テロや他の国家安全保障に絡む在留資格の欠如に関連して追加審査が必要と判断された」場合のみSNSのIDを要請するというが、韓国では「ビザ審査書類にあるSNS ID欄を空白のまま提出すると余計審査に時間がかかってしまうかもしれないので、予め当たり障りのないSNSのIDを作って備えよう」という雰囲気になっている。

米国向けビザ発給手続きを代行する法律事務所も、子供のSNSコンサルティングに乗り出した。米国の大学やビザ発給審査で問題にならないようにするためには、SNSにどんな内容を書き込めばいいのか。それは本人がピアノやバイオリンなどの楽器を演奏する姿を載せるのが一番だという。子供に楽器の演奏を学ばせるほど金銭的余裕があり、クラシックをたしなむ教養ある家柄で育ったとアピールできるからだ。その他に、米国に親戚がいると書くのは不法滞在する可能性があるとみられるのでよくない、中東に関する風景写真・料理写真も一切掲載してはならない、といったことをアドバイスしていた。


「米国ビザ取得できない? SNSでの発言を自己検閲」  TV Chosun / YouTube

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

逮捕されたイランのノーベル平和賞受賞者、激しい殴打

ビジネス

英財務報告評議会、EYのシェル監査を規則違反で調査

ビジネス

MUFG、インドのノンバンクに5000億円超出資へ

ビジネス

ドイツ輸出先、中国が7位に後退へ 15年ぶりトップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story