コラム

高校生たちが考えた給食の食品ロス解決イノベーション「レインボートレイ」

2016年04月29日(金)23時36分

 韓国はもともと食べ残しがあって当たり前の生活環境だからか、給食の食品ロスは学校給食が本格的に始まった1994年以来ずっと問題になっていた。食べ残しが多いとその分無駄な食費を使ったことになる。食品ロスが増えれば環境汚染も問題になる。食品ロスを減らせば無駄がなくなり、その分給食の質がよくなる。学校の教師たちは毎日のように「今日は食べ残しのない日を目指そう」と学生たちを指導しているが、なかなかうまくいかない。

 そこで給食の食品ロスをなくそうと立ち上がった高校生たちがいる。教育熱の高い地域として有名なソウル市木洞(モクドン)にある中高生7人と教師である。元々は海洋汚染の原因について勉強していたところ、原因の一つに食品ロスがあることを知り、これを減らすにはどうしたらいいのかと悩み始めたそうだ。この中高生たちはサムスン電子が毎年行っている「Samsung Tomorrow Solutions」公募で賞までとったすごい学生たちなのだ。

 サムスン電子の公募は人々の生活や社会をよくするイノベーションアイデアを競うもので、2015年度は1235チーム、5823人が応募、12チームが受賞した。受賞すると、アイデアを実現するための費用と賞金がもらえる。入賞チームへの賞金総額は2億ウォン(約2000万円)である。

 アイデア審査は専門家やサムスン電子の役員だけでなく、ネットに各チームのアイデアを公開し、ユーザーによる投票も行った。受賞したチームがアイデアを実現するため、技術的なところはサムスン電子の社員らが助けた。

 レインボートレイは2014年度に最年少チームでありながら最優秀アイデア賞を受賞、2015年度はそのアイデアを実践して社会に影響力を発揮、学校や軍部隊の食品ロスを7割も減らした功績が認められてインパクト賞を受賞した。

 木洞の中高生たちが出したアイデアは「レインボートレイ(ランチプレート)」と呼ばれる給食用食器である。レインボートレイは、韓国の学校や軍部隊、企業の社員食堂など、団体給食の際に必ず使われるステンレス製のランチプレートの底に目印を書き、ここまでごはんを取ったら茶碗1杯分、ここまでは2杯分などと量がわかるようアイコンを入れた。レインボートレイは既存の給食用ランチプレートに線を書くだけなので、製作費もかからないしすぐ導入できる。しかも見た目がかわいい。


Samsung Tomorrow Solutionsによるレインボートレイの紹介動画 © 삼성 투모로우 솔루션 Samsung Tomorrow Solutions

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story