具体的な仕組みとしても、司令塔あるいはリーダーシップを負かされたまとめ役がいないことが21世紀の日本の現象である。政治家も、派閥は非難され、議院内閣制であるにもかかわらず、内閣と党でリーダーは分散している。
具体的な政策を纏め上げるリーダーとなるはずの官僚も、官僚批判および官邸主導となり、ただの御用聞きになってしまった。
学者サイドも、リーダーシップを発揮しようものなら、違和感満載で、官僚からも政治からも、そして世間からも出すぎたやつ、として非難される。
どうしたらいいのかは、わからない。
しかし、理想の案を述べよ、といわれれば、やはり、これからの日本社会においては、政策全体を取り仕切るのは、政治家と官僚と学者とが三位一体となってやっていくしかないと思う。
2025年もキーワードは「分断」となるであろうが、政治家、官僚、学者の間の分断を消滅させることしか、日本社会における健全な政策議論のマーケットを復活させる道はないと考えている。
具体的な提案が一つある。このアステイオンをすべての政治家、政策担当者に認知させることだ。この硬派の政策議論を一般には埋もれさせておくのは罪とも言える。私も燻っている場合ではない。
小幡 績(Seki Obata)
株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。
『アステイオン』101号
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
CCCメディアハウス[刊]
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