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インタビュー

新型コロナ・病床に対する補助金「1日当たり最大43万6000円」は妥当だったのか?...診療報酬制度とのミスマッチ

2024年12月18日(水)10時55分
田中弥生 + 土居丈朗(構成:髙橋涼太朗)

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決算検査報告 提供:会計検査院

土居 現場の職員以外は誰も知らなかったということは驚きです。しかし、それ以上にどういう順番でお金を使い、どの財源がいくら残っているのかの整理簿や管理簿をきちんとつけて出納の面で管理していることは初めて知りました。

田中 昭和29年(1954年)閣議決定「予備費の使用について」第4項に、予備費は「その目的の費途以外に支出してはならない」と書かれています。私どもはこの70年も前の古い閣議決定がいまだに大きな効力を発揮していると思っており、そのことは報告書にも記しました。

土居 それは本当に驚きですね。ところで、ここで1点確認したいのですが、予備費は翌年度に繰り越せないはずですよね。

田中 予備費そのものを翌年度に持ち越すことはできません。どうしても年度をまたぐ事業の際には、予算の繰越しを事前承認してもらう「明許繰越し」は可能で、実際には、予備費の使用を決定して事業費の予算にした後、全額繰り越されていたケースもありました。

例えば、予備費の使用について年度末の3月23日に閣議決定されたものは使える日数が年度内に残り数日ぐらいしかないのに、その予備費の積算を見ると240日とか12カ月分が計上されているものがありました。

各省に聞いたところ、年度内に使う予定だった、と。財務省も年度内に使われることを前提として手続きをしたと回答するなど、我々には判然としませんでした。

土居 2020年は新型コロナの影響で予測が難しい状況だったため、大きな予備費を積んだのだと思いますが、ある程度使途が分かるなら、財政民主主義の観点からも費目を限定した予算を最初から組むべきだったと思います。

※第3回:税金が「何に使われたのか」という国民の声は大きくなっている...田中弥生・会計検査院長が掲げた「5つの目標」とは? に続く


田中弥生(Yayoi Tanaka)
1960年生まれ。2002年大阪大学大学院国際公共政策研究科で博士号取得。笹川平和財団研究員、国際協力銀行プロジェクト開発部参事役、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構教授などを経て、2019年9月に会計検査院検査官、2024年1月に会計検査院長に就任。専門は非営利組織論、評価論。著書に『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』(集英社)、『NPOと社会をつなぐ──NPOを変える評価とインターメディアリ』(東京大学出版会)など。

土居丈朗(Takero Doi)
慶應義塾大学経済学部教授、アステイオン編集委員。1970 年生まれ。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、現職。専門は財政学、経済政策論など。著書に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学(第2版)』 (日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)、『平成の経済政策はどう決められたか』(中央公論新社)などがある。


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 『アステイオン』101号
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