英国滞在中は、1940年代のリベラルコンセンサス、1980年代の新自由主義という2つのトレンドを世界に示した国が、次に何を示すのか(示せるのかも含めて)に目をこらした。
答えは今も見えていないが、2016年以降、潮流が変わったという感覚は強まった。米民主党政権の「ミドルクラスのための外交」や「新ワシントン・コンセンサス」にトランプの残像が見えることも大きい。
普段は漠然としか考えないことを、少し背伸びして考える機会。それが『アステイオン』だ。私のようなサボり癖のある記者は、日々のニュースには集中しても、それらが総体として意味するものを考えることが苦手だ。そんな時に「普段使っていない筋肉を使いませんか」と刺激してくれる。
2016年の英米での衝撃は何かの間違いだったのか、歴史からの「逸脱」だったのか? きっとそうではない。今も私たちは2016年の衝撃の中を生きているのだろう。
今年は、米国はもちろん、おそらく英国[編集部注:2024年7月に労働党に政権交代]も含め、世界で重要な選挙が続く。新トレンドの萌芽は見えてくるのか。それはどんな方向性なのか。『アステイオン』では、専門家による領域横断的で、大胆な論考を読みたい。
金成隆一(Ryuichi Kanari)
1976年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、2000年朝日新聞社入社。大阪本社社会部、ハーバード大学日米関係プログラム研究員、ニューヨーク特派員、東京経済部、ロンドン特派員を経て現職。第21回坂田記念ジャーナリズム賞、2018年度ボーン上田記念賞を受賞。著書に『ルポ トランプ王国』『ルポ トランプ王国2』(いずれも岩波新書、第36回大平正芳記念賞特別賞)など。
『アステイオン』100号
特集:「言論のアリーナ」としての試み──創刊100号を迎えて
公益財団法人サントリー文化財団
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