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新型コロナ禍において普及が進んだものは多々あるが、データの分析や可視化(ビジュアライゼーション)を主題とするデータ報道(データジャーナリズム)もそのひとつだろう。感染状況が逼迫していた時期は、毎日の新規感染者(検査陽性者)数や重症者数といったデータが注目を集めた。
筆者は2020年2月にウェブメディア「東洋経済オンライン」上で新型コロナの感染状況を示すダッシュボードを開発した。
新型コロナ禍を受けて急遽制作したものだったが、その後フェイスブックで12万回、ツイッター(現X)で10万回超シェアされるなど、予想を超える反響があった。新型コロナウイルスという未曾有の危機において、データ報道への社会的な需要が強まったことを感じた。
データ報道それ自体は、歴史上初めて現れた試みというわけではない。英国ガーディアンの前身である「マンチェスター・ガーディアン」は、1821年からデータ報道に類する記事を掲載していた。
1970年代には、データをもとに社会科学や行動科学的な分析・研究手法を報道に活用する「精密ジャーナリズム(プレシジョン・ジャーナリズム)」と呼ばれる種類の報道も米国で提唱されている。
では現代、2010年以降のデータ報道を特徴づけるものは何か。ここでは読者がニュースを体験する媒体に注目する。
すなわち、報道コンテンツを体験する場が新聞紙、雑誌、テレビからスマートフォンやタブレットといったデジタル端末に移行したことにより、従来は存在しなかった表現が生まれた。それがインタラクション(双方向性)である。
地図を拡大・縮小する、ボタンを押してグラフの集計カテゴリーを切り替える、グラフィックのあるポイントをタップして詳細な情報を表示する、といった方法で表示される情報を選択できる。紙とデジタル端末との最大の違いはここにある。
こういったインタラクションを活用することによって、膨大な量のデータや、複雑な構造を持つデータを全体から詳細まで理解できるようになった。
たとえば日本で過去に発生した交通事故のデータが手元にあるとする。紙で表現しようとする場合、広域地図で全体の分布を示したり、特筆すべき傾向を文章で表現するのが定石だろう。
インタラクティブな地図を使えば、日本全体での傾向を外観したのち、シームレスに自宅の近所まで拡大することもできる。ある地点をタップして詳細を表示させるような仕様にすれば、さらに詳しい情報を得ることもできる。
いわば鳥の目から虫の目までをひとつのコンテンツで見せることが可能だ。場合によっては、天候や時間帯など様々な条件でフィルターをかけることもできるかもしれない。
そしてこの変化は、ニュースの体験そのものにも影響を与える。今までは新聞なら「読む」、テレビなら「観る」と、コンテンツの受容方法が明確だった。
vol.101
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