図2 ロンドリーナ祭りで披露される横笛演奏(2022、ジュリアーノ・ガルシア撮影)
現在、ブラジルの日系文化プレゼンスでもっとも熱いと思われるエリアが、南部のパラナ州である(図1)。戦前から多くの日本人が入植した地域であり、戦後は政界、財界、法曹界、ビジネスなどさまざまな方面に進出し、めざましい活躍をしている。
同州北部の中心都市ロンドリーナ(人口約55万)は、戦前イギリスの土地会社によって開発され、ロンドンにちなんでその名がつけられた。日本人の入植も戦前の1930年から始まり、すでに三、四世の世代を中心に強力なインテグレーションを持った日系コミュニティが存在する。
さて、同地の日系文化で、ブラジルのダンスシーンでも注目されているのがマツリダンスである。マツリダンスは、毎年9月に行なわれるロンドリーナ祭り(Londrina Matsuri)で披露される創作盆踊りで、90年代に「新しい盆踊り(ボンオドリ・ノーヴォ)」としてこの地域で始まった。
盆踊りを基礎にした振付けにポップスやストリートダンスの動きを加え、日本のポップミュージック「松本ぼんぼん」「島唄」「ギザギザハートの子守唄」「ピーチ」「ランナー」、最近のものではテリヤキボーイズの「Tokyo Drift」など、ジャンルもテンポも異なる曲をアレンジしているのが特徴だ。
生演奏をバックに男女の歌い手が歌い、お神輿を据え付けた舞台の上では祭り太鼓と踊り部隊が盛り上げる。
ロンドリーナ祭りは2003年から始まった催しで、毎年9月に開催される。最初市内のニシノミヤ公園で行われていたが、観客の増加で現在は郊外のネイ・ブラガ公園で行われている。主催者は日系ミュージシャン、ミリアン・ミチコ城間の率いるグルーポ・サンセイだ。
広大な会場には、焼きそば、巻き寿司など日本食品や飲み物、民芸品を売る屋台、子どもの遊び場が並び、週末の団らんを楽しむ家族で賑わう。コロナ禍からの復活を期した2022年は3日間で2万5000人が会場を訪れたという。
ステージでは歌謡ショーや太鼓、琉球舞踊、よさこいソーラン、この地方の伝統舞踊などが次々に披露される。そして、この催しの目玉として毎晩踊られるのがマツリダンスである。
マツリダンス創作の経緯は次のようなものである。ブラジル日本移民80周年であった1988年、当時カラオケ教室を開いていたミチコさんは、日本の歌を日本のメロディーに合わせて歌うことに今一つ物足りなさを感じていた。
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