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ブラジルのダンスシーンで大注目、日本文化が独自進化した「マツリダンス」とは? 一晩で1万2000人が一斉に踊った

2023年12月13日(水)11時10分
根川幸男(国際日本文化研究センター特定研究員)

マナウスのジャングル祭りと盆踊り

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図4 ジャングル祭りで盆踊りを楽しむ人びと(2023年8月、筆者撮影)

アマゾナス州の州都で、アマゾン河中流域に位置する都市マナウス(人口約220万)では、乾季の8、9月に「ジャングル祭り」(Jungle Matsuri)が開かれている(図4)。そもそも、盆踊り自体は、マナウス周辺の各地の日本人移住地で、60年代くらいから踊られていたという。しかし、それが地域のマツリとして定着したのは最近のことだ。

2019年、アマゾン日本人移住90周年を祝賀するに当たり、その目玉として企画されたのがジャングル祭りである。

主催団体の西部アマゾン日伯協会の錦戸健氏は、当時の一世からニ、三世への世代交代という課題を踏まえて、次世代の新たなアイデアに基づき、またブラジルの日本文化ファンの要望も受け入れて試みたのがこのジャングル祭りであると語る。

マナウスは、1967年にゾーナ・フランカと呼ばれる関税優遇地域に指定され、世界中から500社を超える企業が集まっている。

日本からもパナソニック、ソニー、ホンダ、ヤマハなどの他、韓国のLGエレクトロニクス、ヨーロッパ、アメリカ企業の工場の進出が目立っている。こうした企業が協賛・出店し、見本市としての性格も合わせ持っているのがこのマツリの特徴である。

ただ、2020年に第2回ジャングル祭りを開催するも、2021年はコロナ禍のため中止。2022年に復活した。

ジャングル祭りの担い手として注目されるのが、地元アマゾナス連邦大学に2010年に設置された日本語・日本文学専攻の存在である。

マナウスの盆踊りをリードするのは、同専攻のリンダ・ミドリ錦戸准教授で、彼女を中心に学生たちがマツリを強くサポートしている。

「日本祭りや日本文化祭というのはブラジルのあちこちにあり、今やありふれているのでね。アマゾンはジャングルがあるから、ジャングル祭りでいこうと」と、命名の由来を述べる。

2023年8月、第4回ジャングル祭りでは、進出企業の見本市とともに、手巻き寿司、オベントー、カツカレーなど郷土食のブースが並び、櫓(やぐら)が組まれ、毎晩8時ごろから盆踊りが行われた。

東京音頭、炭坑節とともに、マツリダンスもレパートリーに組み込まれ、新旧盆踊りを新旧の世代、日系・非日系の人びとがともに楽しむ姿が見られた。アマゾン流域最大の都市でも、盆踊りに代表される日本文化は、現地の人びとを巻き込みながら、そのプレゼンスをしっかりと主張し始めているのである。


根川幸男(Sachio Negawa)
1963年大阪府生まれ。サンパウロ大学哲学・文学・人間科学部大学院修了。博士(学術)。移植民史専攻。ブラジリア大学文学部准教授を経て、現職。著書に『ブラジル日系移民の教育史』(みすず書房)、『移民がつくった街サンパウロ東洋街──地球の反対側の日本近代』(東京大学出版会)、『移民船から世界をみる──航路体験をめぐる日本近代史』(法政大学出版局)など。


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アステイオン』99号
 特集:境界を往還する芸術家たち
 公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
 CCCメディアハウス[刊]

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