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※第1回:梅棹忠夫と下河辺淳とともに「遊びのある地域文化」を探し出した...サントリー地域文化賞選考委員座談会(上)から続く
佐々木 『サントリークォーター(※2)』の取材で、かつて「地域文化賞」を受賞された地域を回りました。
受賞10年後にどうなっているかということを含めて面白かったのですが、長続きしている地域の文化については、世代交代がうまくいっているかどうかという観点で見てしまいがちです。
ところがそんなことより大事なことがある。中心になって演説したり挨拶したりするのは男たち。
でも、人が集まって何かをするときには必ず裏で支えているのは女性だということ。どの地域でも女性がものすごく活発で面白い。そこを見ないと人の集まりというものが持つ力は見えないと痛烈に思いますね。
御厨 ずっとご覧になっているうちに、それが確信になったわけですね。
佐々木 確実にそうです。だから、行くたびに「ちょっと奥さんに会わせてください」とか「奧さんの話も一緒に聞きたい」と言うようにしていました。
2000年の高知県赤岡町(現・香南市)の絵金祭りと絵金歌舞伎(※3)。行ったら仕切っているのは一人の女性。
舞台に出るのは男たちだけど、その女性がまちの人たちに「ちょっとやんない?」と声を掛ける。その勢いに誘われて入り込んだら面白くなっちゃって、という人たちが集まっていた。
彼女のプロデュース力と魅力。ああ、坂本龍馬のお姉さんはすごかったんだろうな、とよくわかるような気がしました。
田中 「こんなもの価値がない」と言ったらおしまいになっちゃうんですよね。絵金って嫌いな人は嫌いですから。
藤森 血みどろでえげつないってね。
田中 その絵金を「祭りとして毎年保っていこう」とする情熱ってすごいですね。お話を伺っていて、徳島の「阿波木偶箱まわし保存会(※4)」を思い出しました。
もともと中心の男性がいらして、その方のおばあさんがやっていたのが、あるとき途切れてしまった。誰もやらなくなっていく過程で2人の女性が引き取り、それを復興して今に至っています。
絵金も箱まわしも「こんなものくだらない。もういいよ」と言わずに踏みとどまる。地方の女性たちには、料理を作るとか宴会の準備をするとかだけではなくて、そういう力があるんじゃないか。権威なんか関係ない。
「面白いから」「自分たちを活気づけてくれるから」、それから「女同士で何かができるから」。そういうところに価値を見出している。
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