KOKI YAMADA-iStock
御厨 このたび、サントリー文化財団の「サントリー地域文化賞」選考委員を20年以上あるいは20年近くお務めいただいた、佐々木幹郎さん、田中優子さん、藤森照信さんのお三方が2023年3月、一斉にお辞めになります。
振り返りますと、選考対象あるいは文化全体についての議論は大いにしてきましたが、選考への関わり方やお気持ちについて伺う機会はそれほどありませんでした。今日はそういったことを伺いたいと思います。
お手元に「サントリー地域文化賞歴代選考委員在任期間」の一覧があります(表1)。20年近く務められた委員はと見ると、梅棹忠夫さんと下河辺淳さん。
この下河辺、梅棹の時代は、「地域文化とは何ぞや」などとも言わずに「これだ!」と決めるような、「神代(かみよ)の時代」であったような気もいたします(笑)。
その時代が終わり、ここ20年は、お三方と、既にお辞めになった石毛直道さんが「地域文化賞」を形づくるアクティブな選考委員でした。「地域文化賞」との関わり、距離感、あるいは驚きやときめきがあったかなど、振り返ってご経験を語っていただけますか。
田中 委員は2003年からですが、覚えているのは2004年からです。驚いたのは紙飛行機(※1)。武蔵野中央公園で紙飛行機を飛ばして、コミュニティを形成している活動です。
「えっ、これでいいんだろうか」と思ったら、藤森さんだったと思いますが、「面白い。面白ければいいんだ」とおっしゃったのがすごく印象的で。
私はどうしても、地域のお祭りや伝統芸能のほうから考えるわけですが、その土地の人たちが「面白い」と盛り上がってやっている。そのことがその場所を活気づける。賞を差し上げることによって活動が長く続いていく。
そこに価値があるんだということですね。ここはそういう賞の差し上げ方をするところなんだと、すごく納得しました。
この会で皆さんの意見を聞きながら、私のなかでのそれまでの「地域文化」のイメージが随分変わっていった気がします。
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