山崎先生の「チャーリー・ブラウンわれらが家父長」というエッセイで、「ピーナッツ」のチャーリー・ブラウンを論じたものがあるが、チャーリーを山崎先生に置き換えることもできるように思う。
「罵倒されながらも彼はみんなの野球チームの指導者であり、失敗しながらもみんなにものを教えてくれる先生でもある。彼がじっと我慢して聞いていてくれればこそ、ルーシーたちも気ままに悪口をいって心の憂さを解くことができる。チャーリー自身どこかでそのことを知っていて、そのせいか悲しげな顔をしながら、彼の表情にはいわゆる被害意識の暗さが見えないのである。...これからの世界に必要なのはひょっとするとこういう種類の家父長なのかもしれない。」
決して出来の良くない自分のような学生を、チャーリー・ブラウンのように時には悲しげな顔をしつつ、我慢強く見守ってくれていたのだろう。
3年前、山崎先生がなくなられた際にご自宅を訪問したが、書棚にはスヌーピーを思わせる置物がじっと部屋に視線を送っていた。
もしかしたら、スヌーピーの視線をうけながら、チャーリー・ブラウンのように指導者や先生、家長父の役割を生涯にわたって演じていたのかもしれない。
山内典子(Noriko Yamauchi)
奈良県生まれ。大阪大学文学部美学科で演劇学を学ぶ。卒業後、サントリー文化財団に勤務し、助成事業や顕彰事業などに携わる。
「チャーリーブラウン われらが家父長」
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