アステイオン

文化人類学

先住民は「信じていない」...幻覚を求める欧米人が熱狂した「アヤワスカ・ツーリズム」の実態

2023年08月09日(水)11時03分
渡邊由美(戦略コンサルタント)

07-20230808.jpg

【写真7】シピボのオナヤ、マリア(仮名) 筆者撮影

植物との同族関係と空気信仰

「最近はみんな詐欺みたいなもんね。数回アヤワスカを飲んで、オナヤを自称する。そんな甘いもんじゃないわよ」

50代のマリアは、35年超の経験をもつ熟練のオナヤで、ムラヤの先父をもつ【写真7】。

「オナヤになりたいなら、最低1年はディエタが必要です。父は1人で森に籠ると、3年ディエタをしていました」

ディエタとは、オナヤたちの修行である。マリアがいうには、プラント・マエストロ(植物の師匠)と総称される50種類超の植物群は、それぞれがNiweと呼ばれる空気とNetoと呼ばれる国をもち、住人である精霊たちが、私たち人間と同じような生活をしている【写真8、9】。

08-20230808.jpg

【写真8】プラント・マエストロの一種、ルプナの水出し薬。ディエタして摂取すると、夢とヴィジョンにルプナの精霊があらわれ、彼らがもつNiwe(空気、エネルギー)を与える。こうして獲得されたNiweを、オナヤたちは「ルプナの精霊が教える治療歌=ルプナのイカロ」として錬金化する  筆者撮影

09-20230808.jpg

【写真9】プラント・マエストロの一種、クヌー・ラオ 筆者撮影

オナヤたちはこのディエタで、好みのプラント・マエストロを1つ選んで摂取すると、夢とアヤワスカのヴィジョンを媒体としながら摂取したプラント・マエストロの精霊たちと意思疎通を図る(次ページ:【写真10、11】)。

PAGE TOP