※座談会のダイジェスト動画は記事の最後からご覧になれます SUNTORY FOUNDATION
『アステイオン』93号(特集「新しい『アメリカの世紀』?」)の発行を受け、アステイオン編集委員長の田所昌幸氏(慶應義塾大学)、93号特集責任編集の待鳥聡史氏(京都大学)、アメリカ外交や国際紛争が専門の小濵祥子氏(北海道大学)が座談会を行った。
田所 『アステイオン』最新号は「新しい『アメリカの世紀』?」と題し、12年ぶりにアメリカを正面から取り上げています。今日は責任編集を務められた待鳥さん、また我々より若い世代の視点でアメリカを分析されている小濵さんと、ざっくばらんに議論してみます。まずは待鳥さんから、責任編集にあたっての狙いや今の感想を聞かせてください。
待鳥 元々『アステイオン』には、時事的な問題を扱いながら純粋に時事的な書き方はしない、今のことを書かずに今を考えるという特色がありますので、今回もその点を意識しながら特集を組みました。
本号は大統領選の行われた2020年11月発売ですが、アメリカ研究者の書き入れ時に、あえて距離を置いて考えるという趣向です。この人なら大丈夫、安心して読んでいただけるという執筆者にお願いしましたので、読まれた方に少しでも得るものがあれば嬉しいですね。
田所 小濵さんは本号を読んで、どんな感想を持たれましたか。
小濵 ほとんどの論考がアメリカの内なる問題を中心に論じている点が印象に残りました。ヘンリー・ルースが「アメリカの世紀」を唱えた1941年当時、アメリカのパワーは物質的にも価値の魅力という点でも圧倒的でしたが、そうしたパワーが今やアメリカの中で揺らいでいることの表れといっていいかもしれません。
政党や教会、労働組合など、個人と国家をつないでいたものが弱くなった結果、国民もしくは市民という意識がアメリカ社会の中で希薄化しアメリカという国の求心力が弱まっている現状について、多くのことを考えさせられました。
田所 たしかに、執筆者の意見が一致しているかはともかく、それぞれに通底する問題意識はありそうですね。アメリカ人にはなぜ自分がアメリカ人であるかについて自覚的でないといけない、宿命のようなものがあると感じますが、民主主義であれ自由であれ、アメリカを統合していたパブリックなものに対する懐疑が共通のテーマでしょうか。
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