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ヒトを襲い、弱い個体をいじめる 「優等生」イルカの知られざる一面
イルカは最高時速40~50キロで泳ぐことができるため、ぶつかると大けがにつながることも(写真はイメージです) Andrea Izzotti-iStock
<食用、観賞用、軍用──イルカの活用目的は歴史とともに変化してきた。水族館のショーやアニマルセラピーのイメージから「賢い」「フレンドリー」と認識されるイルカだが、付き合い方を誤ればヒトにとって危険な存在にもなり得る>
水族館のショーや海洋でのウォッチングで大人気のイルカ。トレーナーと協働して芸を行うほど人馴れして賢く、正面から顔を見ると笑っているように見えるところも可愛いと親しまれています。
けれど、近年はイルカが人間に危害を加えたり、動物兵器として活動したりするケースが報告されています。今年の夏は、福井県に1日に最大で6件もヒトを襲った「凶暴なイルカ」が現れました。米テレビ局のCNNは「ロシアは2月のウクライナ侵攻以来、クリミア半島に軍用イルカを配備していることが分かった」と報じています。
イルカはヒトの良き友人なのでしょうか。ヒトとイルカの関係の歴史を概観しましょう。
今日は「鑑賞目的」が主流、「アニマルセラピー」への利用も
イルカは、大雑把に言うと「体長4~5メートルまでの小さいクジラ」です。クジラは、地球最大の生物であるシロナガスクジラなどを含むヒゲクジラと、マッコウクジラやイルカ、シャチが含まれるハクジラに分類されます。
イルカの活用目的は、歴史とともに①食用、②観賞用、③軍用と変化し、多様になりました。
ヒトとイルカの初めての関わりは先史時代にさかのぼります。世界各地の貝塚からはイルカなどのクジラ類を食べたり、骨を道具として利用したりした跡が見つかっています。日本では縄文初期(約8000年前)の稲原貝塚(千葉県館山市)から、イルカの骨と黒曜石を使った石器が出土しています。
第二次世界大戦直後の食糧難の時期までは、日本では貴重なタンパク質源としてイルカ食は珍しくありませんでした。けれど、食が豊富になったこと、イルカは身体に占める脳の割合が大きく「知性の高い哺乳動物」だと分かったことなどから、最近は伝統的にイルカ漁が盛んな地域などに限られつつあります。
日本でのイルカ漁は、岩手県を中心とした東北地方の突き棒漁と和歌山県太地町の追い込み漁に代表されます。09年には、太地町のイルカ追い込み漁を批判的に描いた米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」が公開され、第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞しました。盗撮や編集手法に問題があるとされる同作ですが、反捕鯨団体や動物愛護団体のイルカ漁反対の根拠に使われるなど、未だに一定の影響を及ぼしています。
20世紀半ば以降のイルカの利用と言えば、水族館で飼育してショーで活躍させたり、野生イルカのドルフィンウォッチングで観光資源として活用したりする「鑑賞目的」が主流です。ただ見るだけではなく、触れ合ったり一緒に泳いだりする参加型のイベントも人気を集めています。近年はさらに派生して、イルカと触れ合うことによって癒やしを得る「アニマルセラピー」への利用も試みられています。
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