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MISIA、ヒゲダンの歌声「1/fゆらぎ」に見る、音楽と科学の深い関係
虹色の衣装で登場し、国歌斉唱するMISIA(2021年7月23日、東京五輪開会式) USA TODAY USPW via REUTERS
<琴線に触れる音楽にはどんな秘密があるのか? なぜ緊急地震速報にビクリとするのか? 人の生活と音の関係に科学で迫る>
年末の風物詩である「NHK紅白歌合戦」の出場歌手が、11月19日に発表されました。
紅組には東京五輪で国歌斉唱したMISIA、中高生に大人気のガールズグループNiziUら22組、白組には動画サイトで人気が爆発した「歌い手」のまふまふ、演歌だけでなくポップス歌唱やライフスタイルも話題の氷川きよしら21組がラインナップされています。松平健が選ばれた特別枠での出場歌手は、今後も増える可能性があります。
ポピュラー音楽は「時代を映す鏡」と言われてきました。近年、その言葉を裏付けする研究がアメリカと日本で行われています。
米ローレンス工科大学のカスリーン・ネイピア氏とリオール・シャミール氏は、1951年から2016年の間に米シングル人気チャート「ビルボード・ホット100」にランキングされた6000曲以上の歌詞の「感情」をAI分析しました。
それぞれの曲の歌詞に含まれる怒り・恐れ・嫌悪・喜び・悲しみを示す言葉を0〜1のスコアで数値化すると、「怒り・恐れ・嫌悪・悲しみ」のスコアは65年間で年々増えてきているのに、「喜び」は徐々に減ってきているという結果になりました。
さらに、1960年代後半から70年代初頭にかけて市民運動が活発化していた時期は怒りや嫌悪のスコアが高く、1989年の冷戦終結宣言の前後は「恐れ」スコアが急減したという現象も見られました。
日本では、2017年に株式会社シンクパワーと産業技術総合研究所が歌詞のトピックを可視化するツール「Lyric Jumper(リリック・ジャンパー)」を開発して、誰でも使えるように無料公開しました。
このツールを使うと、あるアーティストの傾向が「自分探し」「大人の恋愛(男性編)」「言葉遊び」など20個のトピックに添って円グラフで表示されます。1曲ずつでも見られますし、各トピックの代表的なアーティスト名を知ることもできます。
たとえば、星野源ならば「センチメンタル」「青春」「自分探し」に関連する歌詞が多く、同じ傾向を持つアーティストは森山直太朗やレミオロメンだ、という具合です。
リラクゼーション効果をもたらす1/fゆらぎ
音楽と科学を結びつけるキーワードでは、「1/fゆらぎ」が最もよく聞く言葉でしょう。
そもそも「ゆらぎ」とは、部分的な不規則性のことです。自然界で規則的だと思われるもの、たとえば天体の軌道運動などにもゆらぎは存在しています。太陽の周りを公転する地球は、毎年、全く同じ軌道を周回するわけではありません。
ある事象でゆらぎが大きすぎると、人は次に何が起こるかが予想できなくなり、不安に感じます。いっぽう、ゆらぎが小さすぎると、人は単調で変化がないと感じるようになり、つまらないと感じてしまいます。
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