ドイツの街角から
バーデン地方の「ワインと食のハーモニー」を探る旅 その1
コロナ禍を経て、自宅で家族や友人を招いてワインと料理を楽しむ美食家が増えました。そこでドイツ最南に位置するワイン生産地バーデン地方のワイナリーを訪ね、ワインと料理の組み合わせにはどんな注意が必要なのかを探りました。
ドイツワイン協会企画のこのツアーの目的は、バーデン地方の有名ワイナリーを訪ねて試飲、さらにワイナリー併設のレストランでワイン料理ディナー、ワインハイキング、自分でつくる料理などを体験して、ワインと食のハーモニーについて知識を深めることでした。さらにノンアルコールワインやスパークリングワインが料理に合うかどうかにも焦点を当てました。
その1ではクライヒガウ地域、その2ではグリルスクール体験とオルテナとマルクグレーフラーラント地域のワインと美食巡りを紹介します。(画像はすべて筆者撮影)
国内で最も南に位置するワイン産地・バーデン地方
バーデン地方はドイツでもっとも南に位置するワインの生産地域で南北400㎞に細長くライン川に平行して伸びています。生産地のバーデン・バーデンやフライブルク、黒い森の西麓、ボーデン湖といった地名は聞いたことがあるかと思います。
バーデン地方のワイン女王ジェシカ・ヒンメルスバッハさんも取材に同行してくれました。
ドイツ国内のワイン生産地13地域の中で、バーデン地方のブドウ畑は国内で3番目に広く(およそ15,800ヘクタール)、北はタウバー川、南はボーデン湖までと広域です。そのため多彩な表情を持ち、地域により多様な土壌を有し、気候は国内でも特に日照に恵まれて温暖な地なのです。
詳しく言えば、バーデン地方には9つの栽培地域(タウバーフランケン、バーディッシェ・ベルクシュトラーセ、クライヒガウ、オルテナウ、ブライスガウ、カイザーシュトゥール、トゥニベルク、マルクグレーフラーラント、ボーデン湖)があり、特色あるワインが各地域で生産されています。
バーデン地方のワインを説明するバーディッシャワイン社CEOミヒャエル・ファルク氏。
さてバーデン地方には2つの特徴が見られますが、ご存知でしょうか。
まず栽培品種は、他と異なり、ブルグンダー品種(ブルゴーニュ品種/ピノ種)とリースリングの産地で。なかでも圧倒的に多いのがシュペートブルグンダー(約35%)を占めている点です。
次は、バーデン地方が属するバーデン・ヴュルテンベルク州のワイン産業の構造です。ブドウ畑の約75%がワイン醸造家協同組合員のものだそう(ドイツワイン全体では約30%)。
大まかな土壌の特徴は、貝殻石灰岩(ムッシェルカルク)や泥土岩(コイパー)、そしてカイザーシュトゥール、トゥニベルク、マルクグレーフラーラントには火山岩の破砕土壌がみられます。
まずはワインの生産だけでなくゴルフ場にホテルにと、多角的な経営で成功しているワイナリーへ向かいました。
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko