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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツ人のオーガニック食品に対する購買意欲が低下 ディスカウントストアと提携で売上アップは可能か

©R_K_B_Tim Rechmann_pixelio.de

物価が継続的に上昇する高いインフレは人々の買い物動向を変えた。ドイツではオーガニックスーパーマーケットが小売業の風景に欠かせない存在となっているが、オーガニック製品はディスカウントストアで入手することが多くなっている。その結果、一部のオーガニック小売業者が存続危機に陥っている。

過去70年間で最も高いインフレ上昇率

先日こんなことがあった。

最寄のスーパーマーケットで魚を買った。価格は1パック3.99ユーロ。ところがレジでは4.99ユーロと表示された。なおこの商品はオーガニック食品ではないが、気がつかないうちに値上がりしている例として紹介したい。

早速「3.99ユーロと表示されていましたが...」と伝えると、レジ担当の女性は売り場まで走っていった。まもなく彼女は、3.99ユーロと書かれた価格カードを手にして戻ってきた。

「本部より値上がりの連絡が毎日入るのですが、価格の書き換えが追いつかない状態です」と、女性は説明した。彼女の責任ではないと理解できるものの、(価格変更は)自分の担当ではないと釈明するドイツらしい返答だと思った。

「この魚は4.99ユーロです。それでも買いますか、それともやめます?」と聞かれた。魚が食べたくて出向いたので「買います」と、返答した。と同時に、「いつまで値上がりは続くのだろうか?」とため息が出た。

一例をあげると、レタス1個は1.15ユーロから1.59ユーロに。ピーマン1個1.49ユーロから1.79ユーロに、パン1㎏1.59ユーロ から1.69ユーロに、500グラムのパスタ39セントから1.19ユーロに。トーストパン1袋は89セントから1.29ユーロにと、値上げは連日続いている。

消費者物価は東西ドイツ統一後、かってないほど急速に上昇した。昨年10月のインフレ率は10.4%に達し、過去70年間で最も高い水準になった。

ちなみに23年1月のインフレ率は8.7%の見込みで緩和しつつある。

なんといってもインフレ率を高めた要因は、エネルギー価格と食料品の価格上昇だ。連邦統計局によると、22年のエネルギー価格上昇は21年度比で43.0%にも上る。

環境意識の高い消費者も物価高騰には勝てない

市場調査会社GfKが昨年秋に発表した数字によると、オーガニックスーパーの売り上げは1年間で10.8%も激減している。自然食品店や健康食品店では37.5パーセントのマイナスさえ記録した。

オーガニック業界の大きな問題は、エネルギー、原材料、肥料市場のコスト高が産業を圧迫していること、食品取引の価格高騰、ドイツ人の消費行動の変化などだ。

ドイツ農民連盟(以下DBV)によると、オーガニック分野の22年総売上高は、約150憶ユーロだった。ちなみに過去最高の21年総売上高は約160憶ユーロを記録した。

そして22年の消費者物価は前年比平均7.9%上昇し、食料品価格は平均13.4%上昇した。

環境意識の高い消費者も、「持続可能なものを買いたいが、インフレ率に見合った収入増は期待できない。結局価格を見て、選択肢があれば安い方を選ぶ」ということらしい。その結果、国内で有名な有機小売業者は債務超過と過剰債務の恐れを避けるため、自己破産手続きによる救済を求めざるを得なくなっている。

ディスカウントストアとのパートナーシップ 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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