シリコンバレーと起業家
Airbnbの上場・旅行と居住の境目がなくなっていく未来
──2020年11月にAirbnbが米証券取引委員会にS-1書式を提出し、株式上場を申請しました。Airbnbの上場は旅行産業ならびにスタートアップ界にどのような変化をもたらすのでしょうか。(聞き手:中屋敷 量貴)
内藤:Airbnbはリーマンショックの最中に生まれて、上場はパンデミックの最中というすごく激動なスタートアップだなと感じています。自分はAirbnbというプロダクトにすごく影響を受けていて、弊社の事業であるAnyplaceもかなりインスパイアされている部分があるのでAirbnbの上場は個人的にすごく感慨深いですね。
AirbnbはUberと同様に、過去10年のスタートアップの歴史を作ってきましたし、旅行産業において人々の旅行の仕方を変えるという形で、新しい市場を開拓してきました。そういう役割を果たしたスタートアップが上場してパブリックの会社になり、ある意味成熟期に入っていくというのは、次の10年の歴史を作るスタートアップが新たに台頭してくるタイミングなのではないかと思っています。
Airbnb自体はパンデミック前はすごく好調だったのですが、パンデミックで売り上げが70-80%下がり、従業員も全体の1/4にあたる1900人ほど解雇していましたよね。7月のロックダウン解除以降は少しずつ調子を取り戻していて、これはAirbnbがGo Nearと言っているんですが、国を超えて移動する人は減ったけど、近場でキャンプに行ったり、自然に触れたり、少し国内で旅行をするといった人が増えてきた印象があります。3ヶ月間のロックダウンで制限されていた、人の中にあるどこかに行きたいという欲求がこのGo Nearのニーズだと思います。
一方で、ヨーロッパ圏では最近になってまた第二波、第三波のような感染の波がきていてロックダウンが再開している地域もあり、Aribnb共同創業者のブライアン・チェスキーも言っているように旅行の仕方は今後のパンデミックが落ち着いた後でも大きく変わるのではないかと思います。具体的には、スロートラベルのようなゆっくりと旅をしたり、あとはデジタルノマドのようなライフスタイルが増えて、つまり旅行と居住の境目が無くなっていくのではないかと考えています。コロナでリモートワークが永久にOKとなり、リモートで働き続けるという選択肢を取る人は増えてくると思うので、そういう人たちがゆっくりと場所を変えながら平日はリモートで働くというライフスタイルは増えていくでしょう。
もう一つの変化でいうと、RVのようなキャンピングカーを借りて自然に触れられる場所に行ったり、キャンプをしたりという人がかなり増えたと聞きます。都市部に旅行に行っても店もやってないし、イベントもなかったりで楽しめないので、感染リスクが少なく、人と接触しない形で楽しめる場所に行こうというニーズが増えています。
HipcampというAirbnbのキャンプ版のようなマーケットプレイスが伸びていたり、あとはRVshareというRVレンタルのマーケットプレイスが最近100億円近く資金調達していたり、それに似たサービスのOutdoorsyが50億円近く調達していたりと、そういうキャンピングカーを借りてロードトリップするといったことが、今後はどんどん増えてくるのではないかと思います。なので、Airbnb後の10年を作るスタートアップはそういうスロートラベル、ノマド、自然、キャンプ、などの領域から現れるかもしれません。
著者プロフィール
- 内藤聡
Anyplace共同創業者兼CEO。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで、いくつかの事業に失敗後、ホテル賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。ブログ『シリコンバレーからよろしく』。@sili_yoro