シリコンバレーと起業家
日本人起業家はどのようにシリコンバレーで資金調達をしているのか
──事業のアイデアが固まってから米国で資金調達するまでで最も難しかったことは何ですか。(聞き手:小林 大河)
内藤:前回の記事で述べたように、日本人の起業家が米国の投資家から資金調達を行うには、アクセラレーターに入ることが一番合理的だと思います。今のアクセラレーターは、昔と違ってトラクション(業績/事業の数字)がないと入りにくくなってきています。アクセラレーターというスタートアップ投資のモデルを一番最初に始めたのがY Combinator(ワイコンビネーター)です。ポール・グレアム(YCのファウンダー)が学生を数人集めて起業させ、そこから、StripeやDropboxなどの急成長を果たしたスタートアップが生まれました。
ただ、当時彼らにトラクションはなく、PG(ポール・グレアム)が「これは!」と思った人に投資をして、起業のノウハウを叩き込むというモデルだったと思います。今のY Combinatorのようなアクセラレーターは、もっとシステマチックになっていて、PGも退任していて現場に居ないのと、1回のバッチで100社以上を採用するため、全ての会社をPGのような人が目利きすることができないため、自然とトラクションを見るようになってきています。
その意味で、弊社Anyplaceもトラクションを作るのが大変で、それを頑張りました。アクセラレーターに入るためのトラクションは、めちゃくちゃ多くなくてもいいですが、月売上5,000ドル〜10,000ドル(約50〜100万円)あるか、売上がすぐに立ちにくいビジネスモデルは、事業のコンセプトが数字で裏付けられているかどうかという点は、最低限確認されると思います。
我々の場合は、現在のAnyplaceの事業に行き着くまで事業を何回か変えていました。いちいちプロダクトをコード書いて作ると時間がかかりすぎて、コンセプトの検証に時間がかかってしまいます。最近ではノーコード(プログラミングをしないでもプロダクトを作成できる)のツールが充実しているので、テンプレートを使用して簡単にウェブサイトを作ることができ、それをクレイグスリスト(米国のオンライン掲示板)に投稿して、ホテルに長期的に泊まる人を探すということを繰り返しました。そのようにして、ジェイソンが最低限要求するトラクションに達成することができました。使えるものは使って、素早く数字を作ることが大事だと思います。
──最終的にはジェイソンさんのアクセラレーターを選ばれたということですが、何社くらいのアクセラレーターに申し込まれましたか。また、申し込み方はダイレクトに申し込むのか、人の繋がりなのか教えてください。
内藤:アクセラレーターは、応募を受け付けているものは全て申し込みました。数は覚えていませんが、10社くらいは申し込んだのではないでしょうか。1番最初に決めてくれたのがジェイソンだったので、そこに決めました。受かるためにすることは、2つあります。1つ目は、テクニック。基本的に聞かれることは決まっていて、アクセラレーターに受かった人たちがオンラインでノウハウを公開しているので、それらの情報を集めて、ひたすら練習します。彼ら(アクセラレーター)は短い時間で投資を判断します。YCの最終面接であれば、10分。面接中は全てを端的に伝える必要があるので、思考を整理して、伝え方を練習していきます。2つ目に、人の繋がりはやはり大きいです。パートナーや採用に関して権限のある人に、紹介や直接連絡したりななどして、知ってもらうことが大事だと思います。
著者プロフィール
- 内藤聡
Anyplace共同創業者兼CEO。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで、いくつかの事業に失敗後、ホテル賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。ブログ『シリコンバレーからよろしく』。@sili_yoro