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農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり

森田早紀|オランダ

愉快なお茶屋さんの真剣なミッション

オランダの首都アムステルダムから電車で1時間半ほど、ドイツの国境近くにある街ナイメーヘン。

この街で最も賑やかな通りのうちの一つにHet Theezaakje、直訳すると「小さなお茶屋さん」というお店がある。

ここでは、Vrolijke thee met sociaal verhaal「ソーシャルな物語のある 愉快なお茶」というモットーで、100種類以上のお茶を取り扱っている。

ソーシャルな物語とはどういうことか。

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ショーウィンドーに展示してあるお茶には、「Afterpartea(アフターパーティーとTeaお茶をかけている)」「Hoppathee(オランダ語で「よいしょ」のような掛け声Hoppateeと、Thee=オランダ語でお茶をかけている)」など、思わずクスっと笑ってしまう名前が付いている。確かに、ソーシャル・外向的と言われればそうだが。

こういうことか?

それとも、お茶と言えばフェアトレード。生産者に公平な価格を支払ったり、茶畑で働く人の権利を保障したりしているということか?

いや、このソーシャルな物語、とはそういう事ではないらしい。でもこの話は少し後で。

まずはお茶を一服。お店に入ると、「今日のお茶」を頂くことができる。

面白い名前の付いたお茶は8種類あり、すべてこのお店のオリジナルブレンドだ。ちゃんと商標登録してある。そしてそれぞれ、凝った名前に合ったハーブ等のブレンドとなっている。

例えば、「Theetosteron(テートステロン)」は、男性ホルモンのテストステロンとTheeお茶を掛けた名前で、アールグレイと黒コショウ、他数種類のスパイスのミックス。まさに、力が湧いてきそうだ。

「Namasthee(ナマステ―)」は、インドの挨拶「ナマステ」から想像されるとおり、シナモン・カルダモン・クローブ等の入ったチャイである。

そして「Afterpartea(アフターパーティー)」は、二日酔いに最適なミックス。生姜・ミント・レモンバームが入っている。

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これらのオリジナルブレンドの他にも、ハーブや花と緑茶・ブラックティー等のブレンドが箱に入って壁にずらりと並んでいる。筆者はここに来て初めて、アールグレイには様々な種類があることを学んだ。レディーグレー、バジルグレー、ジンジャーグレーなど。

そしてもちろん、もう少し高級なお茶も複数ある。

オランダに来て3年目にして初めて、このお店でようやく筆者は、玄米茶・ほうじ茶・煎茶を購入した。家に帰ってさっそく一杯淹れると、3時のお茶・食後のお茶の習慣がある家庭で育った身にはとても懐かしい香りが部屋に広がった。

この高級茶のラインナップには(少なくとも筆者にとっては)目新しく、ときには少し退いてしまうようなものも含まれている。例えば、10年かけて発酵させたプーアル茶(数十年発酵させたものもあるらしい)。燻したラプサン茶。

このお店では、サンプルの匂いを嗅ぐことができるのだが、ラプサンの入った缶を開けた瞬間、煙たい香りが顔面をパンチしてきた。

「チョコ・ラプサン」と可愛い名前に騙されてしまいそうな、ラプサンとカカオの殻の強烈なブレンドも置いてあった。

何十種類ものお茶に呑まれて迷ってしまいそうだが、お店の人が選ぶのを助けてくれる。

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さて、「ソーシャルなお話」に戻ろう。

このお茶屋さん、実は働き辛さを抱えた人たちが安心して働き、ゆくゆくは一般企業に戻れるような場所を提供しているのだ。(専門用語を使うと、「ソーシャルファーム」と呼ばれるもの)

労働者協同組合という組織形態をとっていて、働く人は皆組織運営の一部。

オランダの文化も関係しているのだろうが、このお店で働く方々や責任者の方とお話ししていて、平らな組織(階級的の逆)で、アットホームな雰囲気な印象を受けた。

毎日の休憩時間には、いわゆる支援者・被支援者、責任者等関係なく、自分が今どんな気持ちでいるのか、変わったことは無いか、などを共有し合うらしい。もちろん、お茶を楽しみながら。

   

Het Theezaakjeからお茶を買って飲むことで、この小さく素敵なソーシャルファームを支えることができる。働きたい人が働ける社会を応援することができる。

ウェブショップもあるので、オランダに住んでいるけれどもナイメーヘンからは遠い、という方も気軽に購入することができる。筆者が以前オンラインで注文した時には、自転車で配達してくれた。

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この記事は広告ではなく、ただただこのお店が好きだから紹介してみた。ウェブサイトはこちらから。

今夜は何のお茶を飲もうかな。よく眠れるように、「Bedsthee」(ベッド・ティー)にしようかな。

※写真はすべて筆者撮影。2022年。

 

Profile

著者プロフィール
森田早紀

高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。

Instagram: seedsoilsoul
YouTube: seedsoilsoul

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