農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり
甘いものが溢れる シンタクラースのお祝い
オランダの代表的な冬の行事、シンタクラース。
スペインからオランダにやってくる。
船に乗ってやってくる。
サンタクロース、ならぬ、シンタクラース(聖ニコラス)。
シンタクラースのお祝いは12月5日だ(正確には、5日がイブ。6日はシンタクラースがスペインに帰る日)。
クリスマスで活躍するサンタクロースのオランダ版とも言えるだろう。実際、サンタの基になった人物の一人とも言われている。シンタクラースのお祭りは中世に始まった。ごちそうで祝い、また貧しい人々の靴にお金を入れる、そんな慣習だったらしい。
近年では、シンタクラースが侍従たちと共に子どもたちのいる家を周り、「良い子」にはお菓子をあげ、「悪い子」は袋で連れ去られるとされている。家族や友達間では贈り物や詩を交換することもある。
この行事で一般的なお菓子は、
> Kruidnotenという、スパイスの利いた一口大のサクサクした焼き菓子
> Pepernotenという焼き菓子。Kruidnotenと混同されることが多いが、私の印象としてはPepernotenの方がちょっと薬っぽい独特な味で、噛むとサクサクではなくしっとりしている
> Chocoladeletterはその名の通り、文字の形をしたチョコレート
この時期になると、スーパーがこれらのお菓子であふれる。
実はシンタクラースがスペインからオランダに到着するのは、お祝いの日の数週間前、11月中旬だ。今年も11月13日に到着が祝われた。
私自身は今年が大学最終年、留学中最後のチャンス。オランダ4年目にして初めて、友達たちと正式にパレードを見に行った。コロナ関係の規制が前日の夜に厳しくなったが、子どもたちのためだからなどという理由で、シンタクラースのパレードは決行。
私の住んでいる街でも、街を横断するように流れる川を、シンタクラースが船で旅してやってきた。
音楽、沢山の観客、仮装した子どもたち。
シンタクラースが侍従たちと一緒に船から降りたら、馬車や馬に乗って、音楽隊と共に街中を行進。
途中で止まっては、馬車の上から、貴族の恰好をした人たちが、お菓子を子どもたちに与える。
この光景を見てふと思ったこと。
そのお菓子を上から与える姿が、第二次世界大戦後のGHQの「ギブミ―チョコレート」の姿と重なってしまった。
子どもたちに砂糖まみれのものを次々と与えるなんて...
砂糖には麻薬と同じような精神的作用や中毒性がある。歴史的に見ても、砂糖は他国を服従させる手段の一つとして使われることがあった。化学的にも政治・経済的にもそれほど強い力を持つ物質だ。砂糖に依存した人々は、砂糖の供給を操るものの奴隷となる。
そんな物質をこのように子どもに食べさせるなんて...子どもたちを砂糖漬けにしようとしている企みに見えてしまった。
ハロウィンも似たような形だろう。
中学時代に家族とアメリカに住んでいた際、ハロウィーンには仮装して袋をもって、トリックオアトリートと近所の家を周ったのを覚えている。姉妹3人が最終的に集めたお菓子を並べたら、ダイニングテーブルを完全に覆ってしまうくらい沢山あった。
結局は数個自分たちのために取っておき、あとは学校の廊下に設置された、これまた大きな、横幅2メートル・深さ1メートルはあるのではという大きな段ボール箱に入れた。いわゆる恵まれない環境にいる子どもたちに寄付されるらしい。
経済面や心身の健康面等で問題を抱えがちであろう彼らを、さらに砂糖に依存させていく。
砂糖漬けにする、これには製糖業界、そして食品業界の利権も関わっているだろう。依存させれば依存させるほど、それを売って利益とする者には都合がいい。砂糖だけでなく、サプリメント・農薬・薬・ソーシャルメディアなども同じような構造だろう。
そんな社会の構図が垣間見えた気がした一日だった。
著者プロフィール
- 森田早紀
高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。
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