日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
公園でキスをしただけで?同性愛者差別とコロンビア
7月29日、ある動画がコロンビアのSNSで拡散され物議をかもしています。その動画には激しく棒を振り回し撮影者を攻撃する女性の姿が。この動画が撮影されたのはコロンビアのとある公園で、攻撃をされているのはひと組のゲイカップルです。彼らの話によると、公園でキスをしていたところ住民の女性が「子供のいる場所で教育によくない行為だ、気持ちが悪い」と注意をし、カップルがそれに対抗したところ住民たちが集ってきて攻撃をはじめたというのです。
この出来事にはLGBT+コミュニティをはじめ多くの人が「同性愛者に対するヘイト行為だ」と反発。2日後には首都ボゴタでこの行為に対抗するためのLGBT+パレードが開かれるまで事態は発展しました。
¡No más homofobia! Repudiable acto de discriminación y violencia en contra de una pareja gay que se besó en un parque de Engativá. Indignante que esto siga ocurriendo, al igual que la complicidad de la comunidad. Debe haber sanciones contundentes. @PoliciaBogota @SePuedeSer pic.twitter.com/HfD37s4FAe
-- Heidy Sánchez Barreto (@heidy_up) July 30, 2022
ボゴタ市長も対抗
この事件が起きた首都ボゴタの市長であるクラウディア・ロペス市長は同性の配偶者がいる同性愛者。以前から同性愛をはじめとするマイノリティへの差別に対して強い問題意識を持っている市長でもあります。今回の出来事に対しても即座に反応しツイッターでいち早く以下のようなコメントを残しました。
「ある公園で行われた同性愛者に対する差別と暴力の動画が拡散されています。これに対して強く抗議の意を示し、平等が当たり前になるまで私たちは戦い続けます。」
差別に対抗するために街に繰り出した人々
この事件に対してアクションを起こしたのはコロンビア人の有名なLGBT+インフルエンサーであるフアン・パブロ・ハラミージョ。
自身のインスタグラムで「明日11時にみんなで平和的な抗議デモをしよう」と呼び掛けたのです。会場となった公園にはLGBT+コミュニティメンバーやLGBT+の子供を持つ家族など大勢の人が集まり、抗議のプラカードを掲げたり音楽やダンスで場を盛り上げるなどして同性愛差別に抗議しました。
またこのデモでは合わせて「ベサトン」も行われました。ベサトンとはベソ(キス)とマラソンを組み合わせた造語であり、同性愛差別に抗議するために公共の場でキスをするというものです。参加したLGBT+のリーダーであるマイテ・ミサス・ティケは「これは公共の場でキスをすることは犯罪ではないという愛の表現です。同性愛者差別こそが犯罪なのです!」とベサトンの目的を語りました。
法整備は進むものの・・・
コロンビアはカトリックの信仰が非常に強い国でもありながら、同性婚が合法だったり身分証明書の性別に「中性」が採用されたりと性に対しては割とオープンな国だったりします。しかし社会のLGBT+に対する理解が深い一方で、彼らに対するヘイトクライムがあとをたたないこともまた事実なのです。
今年4月にはボゴタでタクシー待ちをしていたゲイカップルに二人組の男が急に殴りかかる事件が発生しました。犯人は殴りながら「オカマだからだ」と繰り返し言っていたという証言があり、これが同性愛者に対するヘイトから起こった事件ということは明らかです。さらに第2の都市メデジンではLGBT+向けのマッチングサイトを使用した連続殺人事件が起こり4ヶ月の間に7人が殺害された他、先月には同市メデジンでLGBT+コミュニティのリーダーだった男性が殺害されており、メデジンではすでに今年に入ってLGBT+に対する殺人事件が15件も起こっているというのです。
Se reporta un nuevo crimen de un activista LGBTIQ de Medellín, se trata de Jeison Vásquez. Nos siguen matando por ser diversos y diversas. Reclamamos el derecho a existir .@Caribeafirmativ .@DefensoriaCol .@FiscaliaCol .@petrogustavo pic.twitter.com/RqXGZcJdhg
-- Andrés Cancimance L (@CancimanceL) July 27, 2022
法律だけに目を向けると一見LGBT+にとって生きやすい国のように見えますが、人々が彼らの人権を尊重できない限りは本当の意味でLGBT+が安心して生活できる社会にはならないのだろうと、これらの出来事を見てひしひしと感じています。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon