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ミャンマーに暮らす

匿名|ミャンマー

ミャンマーコロナ第三波の裏で蠢く軍の思惑とは何なのか?

22222運動の様子(関係者提供)

今、日本でのニュースのトップはやはりオリンピックなのだろうか。
私はオリンピックの話題の中でもどうしてもミャンマーの選手はどうなったのか、また何かメッセージが発せられたりしないのだろうか、本人や家族の無事は?
など、どうしてもそういった方面から観てしまう。
こんな状況では純粋にスポーツを楽しむという気分にはなれない。

そもそもミャンマーの市民たちは今コロナで大変な状況である。
直近の数字、
陽性率は38.47%で、死亡者数は396人。
全体では355人が死亡している。
これだけみていただければとんでもない状況だということは伝わるだろうか?

ただしこれは全体を見通せる数字などではなくあくまで一部である。
その理由は二つ。
先ずミャンマーはそもそもこういった数字を正確に取れるインフラが日本ほど整っていなかったということ。
もう一つ、こういった数字の発表はスポーツ・保健省が出すものであるが、それが果たしてどれだけ正確に伝えられているかも疑問があること。

私の記憶が確かなら、今年の一月。
民主政府である与党NLD側の発表では今年の4月からは国民へのワクチン接種が良い形でスタートできるであろう事が発表されていた。
本当に実際出来ていたかどうかはわからないが、少なくともそういった情勢を基に一時帰国していた日本企業の駐在員のミャンマーへの帰還なども予定されていたと聞く。
それが今はどうだろう。
2月1日のクーデターをもってして、軍は乱れた民主政治を正すなどと宣っていた。
コロナ対策についてもスーチー氏は充分でなかった我々はしっかり国民の為にやっていくなどと言っていたはずだが。

その後コロナ対策だけみてもやったことと言えば
4月の外出規制の解除、飲食店などのオープン許可などはしたものの、ワクチンの国民への接種などはどうなっているのか全く不明。
表や裏で国民が懐疑的にならざるを得ないような様々な施策を行うだけでなんの効果も見出せないまま懐柔策のつもりなのか、コロナ対策を緩めていっただけのように思う。

世界のコロナ情勢をみていれば予測しえないはずはない第三波についての対策はどうだったか?
「我々はしっかりやっている」
というようなアピールはしていたと思う。
自分たちの言う事を聞かないメディアの全てライセンスは取り消し、軍のプロパガンダしか流していないと言われるTVなどを通して。

7月5日、再び飲食店などの店内飲食の禁止などを求める発表がなされた。
禁止を求めると表現したのは、軍の言い方はどうであれ「言いっぱなし」だったからである。
私から見れば「一応言う事は言った」と言い訳をするためでしかない。
事実以前スーチーさんから発せられた緊急事態宣言の時とは比べ物にならない普及率の悪さだった。
この感、どれだけのコロナが愚策により蔓延してしまったかは計り知れない。
日本ではあまりニュースになっていないかもしれないが、この間も軍は熱心に市民への弾圧をしている。
もはや手段などなんでもありだ。
この世の犯罪という犯罪を全て詰め込んだような方法で、軍への批判を抑圧している。
国際法はおろか、国内憲法、法律、倫理、全てに反した方法である。
人として気違いである所業の数々はまともに正視できないものであるが、紛れもない真実だ。

私を含め、多くのミャンマー人国民はその事は忘れない、いずれ必ず白日の下に晒されしかるべき罰を受ける時がくると信じている。
こういった情報はインターネットを検索すればいくらでも出てくる。
主にはSNSでのものになるので、信ぴょう性を問われるべきことではあるのは理解した上で言わせていただけば、
これが創作だとする意見を軍のプロパガンダは言うが、
であれば、事実はもっとひどいものであると私は言い切れる。
筆舌に尽くし難い蛮行が今日、今この瞬間もミャンマーのどこかで行われている。
それほどミャンマー人ネットワークを持っていない私のところにすらそういう情報が入ってくるのだ、実際の数字は一体どうなっているのか、考えただけでも気が狂いそうになる。

現在毎日数千名のコロナ陽性者が発見され、死亡者も数百人出ているという状況である。
しかし、ヤンゴンの火葬場である一日で1000体以上の死体が荼毘に付され、更に多くの遺体が火葬できずに列を成している日があったという。
まさに地獄のような光景であろう。
ご家族の思いを察するといたたまれない。

インターネットといえば、ここ数ヶ月どうにもその挙動のおかしさを感じる。
長らくFacebook、Messenger、Twitter、InstagramなどはVPNと呼ばれるものを通してでないと使えない状態であったのだが、ここに来てそれ以外のサービスもVPNを通さないと使えない事が増えた。
規則性がないので体系的に説明するのが難しいのだが、例えばストレージと呼ばれる外部にデータを共有するためのサービスや、情報を発信するブログなどのサービスに入る時にVPN無しでは繋がらない場合がある。

少し前に通信を傍受するシステムを取り入れるように軍が通信社各位に命令を出している事、それに従う通信業者があることや抗う企業が身売りに追い込まれるなどの事件がニュースになった。
私はインターネットというのは自由の象徴のようなものだと据えている。
勿論諸刃の剣のように良いところも悪いところもあるが、清濁混ぜ合わせて結果としては人類の英知を多くの人に与える良いものであると考える。
それすらコントロールしようとするのは正に人類に対する暴挙であると断罪したい。

中国のやその他の危険な国のように情報さえも統制しようとした国で一体何が出来るというのだろうか。
ミャンマーのようなまさに多様性に富んだ国をそのような前時代的な流れにもっていこうとする動いは愚かとしか言いようのないことだ。

今軍に属する人間、少なくともトップから順番に馬鹿だという意見を多く聞く。
それは間違いではないのだとは思うが、私はもう少し複雑であると考える。
悪知恵が働くというか、まともな人間では考え付かないような卑劣な方法で自分たちの利だけは守ろうとする方法には非常に長けている人物が中には確実にいる。
総じて愚かであることは間違いないのだが、このことは非常に恐怖を感じる事実だ。
今月行われているコロナ第三波後の軍の施策をおさらいしてみよう。

ワクチンを中国やロシアから入手するという事をやったようだが、それが市民に降りてくるというような情報はない。
たまに先ほどのプロパガンダTVからちゃんとやっている旨の広報はあるが、もはや国民は誰も信じていないし、仮に本当に与えられたとしても切羽詰まっていない人は受けようとしないだろう。
その代わりにどんな事が行われるかわかったものじゃないからである。

既に医療崩壊は起こっている。
具体的数字を見るといかに日本の医療体制が優れているのかがわかる。
日本では仮に医療崩壊が100%だとするとそこに迫った段階で危険が近づいていると警告が出来る余裕がまだある。
しかし、例えばヤンゴンの一つの病院の例を見ると
病床数60に対して、すでに249の受け入れをしている。
その上でこれ以上は受け入れは無理と言っているような状態だ。
日本の様な余裕は微塵もない。

このような状況で今国の施政を支配しようとしている軍がどのような事をしているか。
医療リソースを全て自分たちの管轄下に置こうと必死で動いているようである。
生ぬるい言い方では正確に伝わらないかもしれないが、要は自分たちが管理する病院にだけ重篤者に必要なものなどを集めているというのである。
わざわざ今酸素吸引が必要な重篤患者がいる病院から酸素ボンベを奪っていくような事を平気でしているのだ。

コロナはある意味国民も軍にいる人間も平等に感染する。
そういった中で40万人いる軍人の安全をアピールし、統率を維持するために率先して医療ソースを奪っていくのだと考えられる。
もはやこれは政治でもなんでもない。
ただの軍による国民への略奪である。
正義もクソもない。

軍は愚かではあるが、目的の為には手段を選ばない。
国民の幸せを考えている割合はゼロではないが優先順位でいけば限りなく最下段に置いている。
クーデター禍の戦いは最初から国民がものすごく不利な状況で始められているのだ。

日本人として自分たちの常識外で事が起こっている事を理解し、その上で一体何が出来るのかを考えていかないといけないと常々思い知らされる。
でないとここにいる大事なミャンマー人の仲間たちを守る事は勿論、共に生きていくことさえ出来ない。
国際機関、とりわけ日本国として早急な対策を願わずにはいられない。
必要な情報はすでに集まっているのか?
もし集まり切れていないのであればその事に命懸けで協力しようという人はいくらでもいると思う。

危険は勿論ある。
大いにあるのでもはやゼロリスクで人道支援など行えない状況ではあるが、何とか頑張って欲しい。
人任せではもはや何も成しえない。
なんの動きもないとは思っていない、日本人として気概のある方々が様々な妨害にある中でも静かに「その時」を目指して動いてくれていると信じている。
その日を、その時を今も切望している人々が沢山いることを伝えたい。

今回の記事もあくまで私個人の所感であることは最後に付け加えたいと。
所詮名前も顔も出せずに発信する身ではあるが、少しでもミャンマーへの関心を持ってもらう一助になればと僅かな知見を基に拙い文章などを紡いでおります。
散文失礼致しました。
どうかこの国が良い方向に歩きだせるよう、日本の、世界の尽力を期待するとともに少しでも出来る事を探し、現地で動ける機会を私も探したいと思います。

 

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