World Voice

カリフォルニア法廷だより

伊万里穂子|アメリカ

リモート法廷内でのお作法が悪すぎて苦言

職員にワクチンも打ってないのに郡がレッドゾーンという少しましな状態になったらしいので

閉めていた裁判所の窓口を月曜からソフトオープニングするという連絡が金曜の午後に来て大ブーイングが起こっている私の職場です。法廷はずっとオープンしていたのですが、窓口は閉めていました。手続きは全てオンラインでやってね、と窓口の職員のコロナ感染が続いた後に閉めました。

今回レッドゾーンになり、(この色のゾーンも911の後のテロ注意報の危険色段階のように何色がより悪いのか大変分かりにくく、赤っていいの?と思いましたが、紫から赤に格上げになり、赤は一段階ましなようです。)

私の勤めている裁判所では10年前から電話でのリモート出廷は始めていました。Courtcallという会社に裁判所が委託して弁護士はその会社に利用料を払い自分のオフィスや自宅から電話で出廷する事が出来ます。

遠方の弁護士やわざわざ出向くまでもないようなヒアリングの時に使う弁護士が多かったです。今回コロナを受けて新たにビデオリモートを導入しました。なるべくなら誰にも来てほしくない裁判所側としてはお金がかかるプラットフォームを選ばずに、マイクロソフトチームという無料で使えるプラットフォームにして、リンクを裁判所のサイトに貼り、使ってもらっています。

弁護士からは無料なのもあり、割と好評なのですが、裁判官達からは弁護士達のお作法が悪すぎると評判が良くありません。

全国区のニュースになった猫のフィルターが取れなくて焦るような弁護士はいませんが

https://www.cnn.com/2021/02/09/us/cat-filter-lawyer-zoom-court-trnd/index.html

自宅という気の緩みからソーダを飲んだり、物を食べながら、どう見たってパジャマのままというような弁護士は多く、これは法廷であって、家族でおしゃべりを楽しむリモートとは違うのだ、という自覚がないのです。物をどうしても食べたいのなら、カメラをオフにすればいいだけの話です。それをしないで自分の案件を待つ間に画面上で自由に飲み食いしているのはやはりアウトなのです。

また散らかった家をバックグラウンドで見られるのが嫌だ、とフィルターをかける弁護士も多いのですが、プロフェッショナルなオフィスの写真を選べばいいのに、自分の推しのスポーツチームのロッカールームの写真や政治色の強いものなど、どう考えたって出廷するのには相応しくない物を使う弁護士がいるのです。

なんで弁護士になる頭があり、それなりの教育を受けて来ているのに、そういう事をするんだろう、と思いますが、なにせ裁判所側も新しい事なので、まだこれといったルールがないので先週の金曜日に弁護士会を通して裁判官がリモート出廷のお作法のクラスをビデオで開きました。

こういう弁護士会の催しに出てくるのはお利口さんな弁護士だけで、一番聞いといてください!と思うような弁護士はそのような会はスルーするので、一番聞かなきゃいけない人は学ばない、というループになり、裁判官が幼稚園のようにいちいち注意して歩かなきゃいけないのです。

スクリーンショットは自分の案件が呼ばれるまで待つのにくたびれて自分のオフィスの椅子にふんぞりかえる弁護士です。この後椅子をクルクル回してたまに変顔をしながら、それこそ幼稚園児のように待っていました。きちんと背筋伸ばしてプロとしての自覚をもってこれは法廷なのだ、と思って待ってほしいのです、待つ間も。この後画面に映る他の弁護士がなんだ、あいつ海に打ち上げられたトドみたいな事して恥ずかしい、と苦言を呈していましたが、それは彼らが法学部で同級生だったから言える事で背筋を伸ばして座れ、とまではなかなか裁判官も言いにくいので法廷内だったら、ふんぞりかえれる椅子もないので、こういう事は起きませんが、リモートだと行儀の悪さが目立つようになりました。

裁判官が行ったお作法のクラスでは法廷と同じルールが当てはまること、バックグラウンドはプロフェッショナルなものにすること、運転しながらリモートで出廷しないこと、など割と当たり前のことだけど言っておかないと守らないので言っていました。

法廷内での飲食は厳禁、携帯は切る、出廷時はスーツにネクタイ。という従来のお作法がゆっくりとでも確実に崩れていっているようです。交通違反のチケットの異議申し立てのために手術中に手術室からリモートで出廷した外科医の話も法曹会では話題になりましたが、便利になったからと言っていい事ばかりでもないのです。

 

Profile

著者プロフィール
伊万里穂子
大学中退後カリフォルニアに移住。海外で手堅い職業をと思い立ち公務員に。裁判所の書記官になる。勤続18年目たった一人の日本人書記官として奮闘中。ブログ「リフォルニア法廷毒舌日記で日々社会の縮図とも言える法廷内で繰り広げられる人間模様を観察中。著書:「お手本の国の嘘」新潮新書

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