カリフォルニア法廷だより
アメリカのキラキラネーム事情
裁判所に勤めていて、日本人を案件で見かける事はあまりありませんでした。
刑事課ではたいてい駐在員の飲酒運転かDVをパラパラ数件見るだけで、民事では亡くなった旦那さんの1人目の奥さんと2人目の奥さんが遺書が偽造されたと土地を巡って争っているという一件だけでした。
こういう案件も日本人は弁護士をつけてくるので、当事者を見かけることは全くと言っていいほどありませんでした。
去年の夏から遺産相続の法廷で働き始めて驚いたのは、まあ日系人の案件が多いこと。
日本人は長生きするので、アルツハイマーになり法的後見人をつける案件も多いようです。日本の苗字が並ぶ案件表を見て驚きました。日本人はアメリカで過ごしても長生きなのか、と。
アメリカ人はボケる程長生きしないのか、後見人の案件は圧倒的にインド人とアジア人の苗字がずらり。
その日系人の名前もとても古風なのが印象的でした。ローマ字表記なので漢字がどんな漢字なのかは分かりませんが、セツコ、エイコ、スミエ、カズヨ、セイシロウ、カズオ、コウタロウ、と古風な名前がずらり。
日本ではキラキラネームの反動で古風な昔からある名前がまた流行っていると聞きます。
アメリカでもキラキラネームは流行っています。有名人が娘に訳のわからない名前をつけているように、一般人でも、え?と思うような名前をつけています。夫の妹が五月生まれの娘にwinterという名前をつけようとして家族全員に反対されたり、同僚で紫色が大好きな子が娘にvioletと名前をつけて、私に紫色って日本語でなんていうの?と聞いていました。いや、名前じゃないよ、それ、季節とか色とかだから、と思いましたけど、まあなんというか古臭い名前が嫌だから、何か目新しい事をしたかったんですかね。
アメリカでも名前だけで人種が分かるような名前もあるので履歴書にやはりそのような名前やキラキラネームがあると人事部も「うっ!」と思うんだろうな、と思います。
ラストネームをファーストネームにつけるのも流行っています。なので、名前を見て、どっちがファーストネームなのか分かりにくいのです。アメリカだけの事だと思います。日本で例えると、山田渡辺、何ていう名前はやはりないですからね、下の名前が渡辺、とか岡田、なのです。
先日の2−19は在米日系人が収容所に入れらる法律がサインされた記念日でした。日系人の古風な名前を書類で見かけるたびに、この方も寒い収容所で「我慢」を標語に辛い思いをされた方なのかな。と思いながら書類にハンコをバンバン押している今日この頃です。
著者プロフィール
- 伊万里穂子
- 大学中退後カリフォルニアに移住。
海外で手堅い職業をと思い立ち公務員に。裁判所の書記官になる。 勤続18年目たった一人の日本人書記官として奮闘中。ブログ「カ リフォルニア法廷毒舌日記」 で日々社会の縮図とも言える法廷内で繰り広げられる人間模様を観 察中。著書:「お手本の国の嘘」新潮新書