タックス・法律の視点から見る今のアメリカ
アメリカのロックダウン・失業率・そして失業保険
米国の失業率は2月に最低記録を更新していたのに
アメリカの失業率は州により異なるものの、2020年2月の段階では2%から3%台で推移しており、多くの州で2月は最低記録を更新していた。失業率は低い方がいいから最低記録っていうのはベストってこと。そんな絶好調な雇用環境下、2月末にシアトルで新型コロナウイルスによる死者が米国で初めて確認されている。その直前、たまたま仕事でシアトル郊外のボーイング工場で有名なTacomaに行っていたのでチョッとドッキリ。
そしてImperial Collegeレポート
3月16日にはロンドンのImperial Collegeが経済封鎖を即敢行しないと米国で200万人の死者が出る可能性があり、さらに対応したとしても死者数は100万人を超えるかも、っていう驚愕のレポートを公表して大パニックに。地元、英国における死者数も50万人に上る可能性あり、と警鐘を鳴らしていた。このレポートのその後のオチは後述する。
ハイドパークの南、ケンジントンの北にあるこのImperial Collegeって、僕もGloucesterにしばらく滞在していたことがあるんでパブでシェパードパイ(カッテージパイではない)食べた帰り道に何回か前を通ったことがあるけど、歴史を感じさせる石造りの建物に近代的なビルがうまく調和している立派なCollege。建物が由緒正しいだけでなく、WHOと協働したりする伝染病学の権威だ。3月16日のレポートは公になっているので、興味ある方はオリジナルを読んでみるのがいい。ニュースとかで間接に聞かされると、レポートや数字は同じでも各レポーターがいろいろな切り口で報道するんで、百聞は一見にしかずだから、ぜひ各自の目でチャートとかを見てみるのがいい。
前代未聞の州による強制ロックダウン
このショッキングなImperial Collegeのレポートがひとつの契機となり、3月19日にはカリフォルニア州知事のNewsomeが強制経済封鎖(ロックダウン)を決定。たまたま前日からロサンゼルスのMarina del Reyにいたけど、急な発表で、かつほぼ即発効に近かったので、ビジネスは大パニック。オフィスワーカーはすでに自主的にテレワークに移行していたケースも結構あったんで比較的イベントレスだったかもしれないけど、レストランとかネイルサロンとかは大変だっただろう。
翌日20日にはニューヨーク州も習うようにロックダウン。ロックダウンに至るニューヨークの対応は紆余曲折で、同じ民主党なのに犬猿の仲と言えるNYC市長De Blasioと州知事Cuomoの普段からの確執がまたしても露呈していて、どっちかがロックダウンというと他方はそんなことはないと言ったりして大混乱。3月前半の段階では、De BlasioはNYCの安全さをアピールするためChina Townで食事してる姿のPhoto Opしたり、地下鉄に乗り、公共交通手段の利用を促したりしていたんだけど、3月中旬にはそんなパフォーマンスも限界に達してギブアップ。もともとロックダウンは医療機関のキャパ確保が主たる目的とされてたけど、いったんロックダウンしてしまうと感染をゼロにするまで我慢みたいな議論も出てきて、経済活動との両立を口にすること自体憚れるような雰囲気の中、出口が見えないままロックダウンが長期化していった。普段ごったがえしているJFKや、Midtownが気持ち悪いほど無人化。4月頭にJFKからLAXに搭乗した便はガラガラで、エアバスA320がまるでプライベートジェットみたい。そんな状況だったのである意味当然の結果として、4月~6月の第2四半期GDPは年率換算でナンと32.9%減という信じられない落ち込みとなった。(続く)
著者プロフィール
- 秦 正彦(Max Hata)
東京都出身・米国(New York City・Marina del Rey)在住。プライベートセクター勤務の後、英国、香港、米国にて公認会計士、米国ではさらに弁護士の資格を取り、30年以上に亘り国際税務コンサルティングに従事。Deloitte LLPパートナーを経て2008年9月よりErnst & Young LLP日本企業部税務サービスグローバル・米州リーダー。セミナー、記事投稿多数。10年以上に亘りブログで米国税法をDeepかつオタクに解説。リンクは「https://ustax-by-max.blogspot.com/2020/08/1.html」