ハッブル宇宙望遠鏡の夢の後継機、開発が大幅に遅れて、コストも天文学的に
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の想像図 (C) NASA/Northrop Grumman
<宇宙の始まりが見える宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の開発が遅れに遅れている。それでも開発が続く理由とは>
米国航空宇宙局(NASA)は2018年6月28日、新型の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」について、開発の遅れを理由に、打ち上げを2021年3月まで延期すると発表した。
2002年に開発が始まったこの望遠鏡は、幾度となくスケジュールの遅延を繰り返しており、コストも超過。それでも開発が続けられるのにはわけがある。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope、JWST)は、NASAを中心に世界が共同で開発している新型の宇宙望遠鏡で、かの有名な「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機にあたる。
ハッブルというと、遠くの宇宙にある星雲や銀河の写真を数多く送り届けていることでおなじみである。その光景は天文学者でなくとも息を呑むほどに美しい。
ハッブルは、私たちでも買えるような天体望遠鏡を大きくし、宇宙に打ち上げたような衛星で、人間の目で見える可視光や、人間には見えない赤外線、紫外線などを使って宇宙を観測している。
JWSTはその後継機と位置づけられているものの、ハッブルとは異なり、可視光で観測する能力はもたず、赤外線による観測のみに絞られている。
ただ、もちろんこれは「JWSTの性能が低い」というわけではない。これまでの人類の宇宙観測の中で、「宇宙は必ずしも人間の目で見えるものが真の姿ではない」、あるいは「赤外線を使えばもっとさまざまな宇宙の姿が見える」ということがわかり、そこで赤外線による観測に特化した高性能な宇宙望遠鏡――JWSTが求められたのである。
その証拠に、JWSTは宇宙の誕生後に初めて誕生した星の観測や、太陽系外にある惑星の探査などに使えると考えられている。
JWSTの想像図。全体が望遠鏡になっており、誕生直後の宇宙や系外惑星の観測に挑む (C) NASA/Northrop Grumman