最新記事

2016米大統領選

最強の味方のはずのビルがヒラリーの足手まとい

妻の選挙戦を助けるはずのクリントン元大統領が次々と失言や暴言を連発している

2016年4月14日(木)16時40分
ミシェル・ゴールドバーグ

「婦唱夫随」 一緒に遊説に回るクリントン夫妻は険悪ムード? Bryan Snyder-REUTERS

 人の心には、時に不合理で邪悪な想念が宿るもの。もしかするとビル・クリントン元大統領の胸の内にも、妻のヒラリーを大統領にしたくないという思いが潜んでいるのかもしれない。そうでなければ、雄弁かつ頭脳明晰なはずの元大統領が、妻の選挙戦で不用意な発言を繰り返す理由が分からない。

 今月初旬にフィラデルフィアで開催されたヒラリー陣営の選挙集会でも、演説中に暴言を吐いた。彼の政権下で94年に成立した包括的犯罪防止法について、「黒人の命を軽視するな」と訴える活動家たちから非難のやじが飛んだときのことだ。

 この法律には、重罪で前科2犯の者が新たに有罪となれば、たとえ3度目が軽い罪でも終身刑を科すという条項がある。そのせいで刑務所暮らしの黒人男性が激増し、結果的に刑務所が過密状態になったとされる。

【参考記事】トランプに勝てるのはクリントンよりサンダース?

 ヒラリーはこの法律の廃止を公約している。夫のビルも昨年には妻に同調していた。なのに、こうほえた。

「13歳の子供を麻薬漬けにして、街なかで同じアフリカ系アメリカ人の子供を殺させるような大人を許すのか」と元大統領は反論した。「そんな奴も善良な市民だと思うのか。ヒラリーは違う。そうは思っていない! あなたたちが大切だと言う命を奪うような連中を、あなたたちは擁護するのか」

 壇上でわめく元大統領の姿は、あっという間にネット上に拡散した。映像を見たヒラリー支持者たちは苦虫をかみつぶし、右派の陣営は狂喜した。

妻に追い越されたくない

 今回の大統領選挙でヒラリーは黒人票を頼りにしている。警官による暴力で息子の命を奪われた母親たちと一緒に、黒人の命の重みについて語る活動も続けている。ところが自分の「実績」に執着する元大統領は、妻が忘れたい過去を思い出させてしまった。

 あの法案が成立した当時、ヒラリーは夫を擁護し、暴力的な未成年のギャングを「スーパープレデター」と呼んだことがある。彼女は今回の選挙戦でその発言を蒸し返されたとき、素直に謝罪している。なのに、夫がまた蒸し返すとは!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中