最新記事

米軍事

アメリカの空を無人機が脅かす

対テロ戦争で多用される無人航空機がニューヨーク上空で民間機とニアミス

2013年3月7日(木)17時15分
ライアン・ギャラガー

大惨事 ニューヨークのJFK空港周辺で無人機が目撃された Shannon Stapleton-Reuters

 オバマ政権がテロとの戦いの切り札として多用している無人航空機。アフガニスタンやパキスタンで民間人への誤爆が相次ぐなか、その是非や使用条件をめぐって大論争が巻き起こっている。

 ただし、無人機が頭上を飛んでいるのは遠い国の「戦地」だけではない。ニューヨーク上空で3月4日、乗客を乗せた民間機と無人機のニアミスが報告され、FBI(米連邦捜査局)も調査を始めている。

 ニアミスが起きたのは、アリタリア航空の民間機がニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に着陸しようとしたときのこと。操縦していたパイロットは「滑走路へのファイナルアプローチを行う際に、無人あるいは遠隔操作された小さな機体を見た」という。

 連邦航空局(FAA)の規定では、小型無人機を特別な許可なく飛ばしていいのは、地上400フィート(約120メートル)より下を飛行し、混雑エリアや大型機から十分に離れていて、商用目的でない場合に限られる。とはいえ、この規定が厳格に守られているかどうかはわからない。

 FBIによれば、問題の無人機は黒くて4つのプロペラがついていた。幅1メートルにも満たない小さな機体で、アリタリア航空機からわずか200フィート(約60メートル)足らずにまで接近したという。

2年後には商用と民間利用も解禁に

 無人機と聞くと、米空軍が保有する無人偵察機のプレデターやリーパーのような大型機を思い浮かべるかもしれない。だが今回目撃された無人機はむしろ、子供が遊ぶラジコン飛行機に近いように思える(コロラド州デンバーでも昨年、「謎の物体」が上空8000フィート(約2400メートル)でセスナ社のビジネスジェット機と衝突しかけた。
 
 偶然にも、ニューヨーク州シラキュースの空軍基地では軍事用無人機リーパーの飛行訓練が行われている。ただしリーパーがJFK空港付近を飛行したり、民間機に近づくことは認められていない。

 2011年にアフガニスタンで起きた米軍無人機と貨物機の衝突を考えれば、無人機がアメリカ上空を自由に飛行するのを認めるのはまだ早すぎるだろう。プレデターとリーパーの飛行は今のところ、アメリカ国内ではアリゾナ州やテキサス州の国境付近など、有人機が飛ばないエリアに限定されている。

 もっとも、アメリカでは警察や消防による非軍事目的での無人機使用はすでに始まっている。さらに2015年9月には、商業目的での利用や民間利用も解禁される。

 だが、無人機の技術が安価になって一般市民にも手が届くようになれば、安全面のリスクは高まる。議会調査局も報告書の中で、さまざまな「無人機犯罪」が発生する可能性を指摘している。「アメリカの空を無人機が飛び交う日が来たら、裁判所はこの新たな技術に合わせて法律を調整しなければならない」   

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中