日米関係は本当に悪いのか
普天間やオスプレイをめぐるきしみの陰で、日米の同盟関係が静かにV字回復を始めた
議論の的 5年間で58回の事故を起こしたオスプレイの配備には強い反発がある(12年9月、米バージニア州) Kyle N. Runnels-U.S. Marine Corps
ここ数年で、日本とアメリカの安全保障関係はすっかり冷え込んでいた。沖縄の米海兵隊普天間基地の移設問題で地元が猛反発。加えて日本の民主党政権はアメリカ一辺倒でなく、中国との関係緊密化に意欲を見せていた。
しかし、最近の日米防衛当局高官の行動と発言を見る限り、日米同盟は最悪の時期を脱し、むしろ再び関係が深まり始めているようだ。
8月初め、日本の森本敏防衛相がワシントンを訪問。訪米の最大の目玉は、ワシントン近郊の米海兵隊基地で垂直離着陸輸送機「MV22オスプレイ」に試乗することだった。
米海兵隊は、オスプレイ12機をCH46中型輸送ヘリコプターに代えて普天間基地に配備する方針だが、日本ではこの輸送機の安全性に関して不安の声が高まっている。4月にモロッコで、6月にフロリダ州で墜落事故があり、モロッコでは2人が死亡、フロリダでは5人が負傷した(老朽化している上に効率の悪いCH46などの後継機としては十分な安全性を備えているというのが、米国防総省の立場)。
日本の世論、特に沖縄県民がオスプレイ配備に強く反発する一因は、沖縄に在日米軍が集中していることへの不快感だ。何しろ、国土面積に占める割合で1%に満たない沖縄に、在日米軍の半分が駐留している。
日本に配慮するアメリカ政府
近年、沖縄の基地問題の焦点になってきたのが普天間移設問題だった。96年と06年の日米政府の合意で移設が約束されたが、代替施設の設置場所決定が難航し、移設は実現していない。
09年には、普天間基地の沖縄県外移設を掲げる民主党が政権を獲得。当時の鳩山由紀夫首相は鹿児島県徳之島への移設を目指したが、地元と米政府の反対に遭い、失敗に終わった。
それでもこの4月、日米両政府は在日米軍再編見直しに関する共同文書を発表。沖縄駐留海兵隊員の半数近くに当たる9000人をグアム、ハワイ、オーストラリアに移転させ、海兵隊基地の多くを日本側に移管する方針を打ち出した。
これで日本国内の反米軍基地感情がいくらか和らぐ......とはいかなかった。普天間への配備前のオスプレイの一時駐機場所である山口県岩国市と沖縄県の当局は、オスプレイの導入に強く反発。地元住民に危険が及ばないと政府が確認できるまで試験飛行を認めないと、野田佳彦首相も述べている。
とはいえ、日米両国政府がこの問題で衝突しているわけではない。米政府は、日本側の不安がなくならない限り、日本国内でオスプレイを飛ばさないと約束している。墜落事故の原因は国防総省が調査中で、調査結果は日本側に知らせると、レオン・パネッタ米国防長官は8月初めに森本防衛相と会談した後の記者会見で述べた。
森本や日本当局者はオスプレイ配備を支持している。沖縄駐留海兵隊がこれまでより遠方まで、しかも迅速に移動できるようになるからだ。その結果、海兵隊が日本の離島を守り、東アジアの緊急事態に対応する能力が高まると期待されている。