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米メディアコーラン焼却騒ぎを煽ったメディアの罪
無名の牧師の軽挙妄動を世界的大ニュースとして報じたことが、各国の暴動につながった
怒りの炎 イランの首都テヘランで「コーラン焼却集会」に抗議して米国旗を燃やす人々(9月13日) Caren Firouz-Reuters
結局、テリー・ジョーンズ牧師は周りからの圧力、そしておそらくは自分自身の良心に屈した。しかしその決断はあまりにも遅すぎた。
ジョーンズの「コーラン焼却集会」計画(後に撤回)を受けて、インド北部カシミール地方やアフガニスタン、イランなどで抗議デモが発生。デモは暴動に発展し、9月13日までに少なくとも16人が死亡した。
暴動は同時多発テロからちょうど9年を迎えた9月11日の翌日に始まった。世界が宗教過激派との対立は避けねばならないと考えている、まさにその時に。狂信者が起こした9年前のテロが、それから10年近く続く2つの戦争を生み、何十万人もの命を奪っている。この恐怖──愚行と呼ぶ人も多いだろう──は、ごく少数の狂った原理主義者たちの激情から始まった。
今回の流血騒動に火をつけたのは、米フロリダ州ゲーンズビルにある、信者50人ほどの小さなキリスト教会の牧師。ジョーンズは11日、NBCテレビの取材に対して、「今日も、そして今後も」コーランを燃やすことはないと語った。
しかしジョーンズが期待していたであろうイスラム教徒の怒りの炎は、既に燃え上がっていた。こうして9・11テロから9年目の今年は、宗教対立に端を発した暴力で尊い命が無意味な犠牲を払わされた一連の騒動が際立つかたちになってしまった。
狂人がイスラムを侮辱するとき
今回の騒動の責任はメディアにもある。取るに足らない牧師の軽挙妄動を逐一報じることが、どんな公益につながるというのか、報道機関は自分たちの役割について省みる必要があるだろう。ジョーンズが参列者もまばらな教会でコーランを焼こうしたことが世界に知れ渡ったのは、それがニュースとして世界へ発信されたからだ。大ニュースとして扱ったことで、メディアはその後の暴動の発生に手を貸したことになる。
いま問うべき問題は、次に同様の事件が起きたとき、メディアがどんな対応を見せるかだろう。そう、またどこかの狂人が一瞬のスポットライトを浴びたいがために、イスラム教徒を侮辱したり他の人々を挑発する行動にでたときだ。