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温暖化ガス

迫りくる「グリーン貿易戦争」

2009年12月24日(木)15時01分
マック・マーゴリス(リオデジャネイロ支局)

 富める国と貧しい国が同じテーブルに着いて温暖化対策の新協定を交渉するのは修羅場だったが、新たな火種が起きつつある。欧米諸国では今、二酸化炭素の排出量を削減しない貿易相手国に関税を課す法案が検討されている。「グリーン貿易戦争」が勃発するかもしれないのだ。

 関税の目的は、排出規制の緩い国が輸出で不公平に儲けるのを防ぐこと。国ごとに規制基準が異なれば先進国から途上国に企業が移転しかねない。唯一の対策が課税だと法案の支持者は言う。関税は途上国に国際協定への調印を迫るための手段になるとの声もある。

 いずれにせよ実際に課税するとなると、物流、法律、外交の各面で大問題になるだろう。テニスシューズがサンフランシスコではなく上海で製造されたら、排出される二酸化炭素はどれほど増えるのか。各国にまたがって製造・供給された部品の税金は誰が払うのか。疑問は尽きない。

 最大の問題は、炭素税が将来どのような形で課せられるのかということ。均一関税か、税金か、それとも排出枠購入の義務付けか。
米議会の民主党重鎮が支持する法案では、早ければ20年にも、排出規制が甘いと見なされた国々に課税される。この動きに途上国は早くも激怒している。

[2009年12月30日号掲載]

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