最新記事

アフガニスタン

アフガン和平で日本に求められる役割

タリバンとの直接交渉に及び腰の米政府をよそに、日本はアフガニスタン支援に積極関与できるのか

2009年11月27日(金)15時50分
ジョシュ・ロギン

50億ドルの約束 カブールで日本の岡田外相(左)と握手を交わすカルザイ大統領(10月11日) Ahmad Masood-Reuters

 米政府は、アフガニスタン政府と多国籍軍を相手に戦いを続けているイスラム原理主義勢力タリバンやその他の武装勢力との直接交渉には乗り気でないようだ。しかしアフガニスタンで敵対する勢力同士の融和を積極的に進めようとしている国が1つある。日本だ。

 11月25日までの3日間、東京で非公開で開催されたアフガニスタン和平に関する国際会議では、アフガニスタンやイラン、パキスタン、サウジアラビアなどから政府代表が参加し、和平構築への道筋を話し合った。アフガニスタンからは、ハミド・カルザイ大統領の和平交渉担当顧問を務めるムハンマド・マスーム・スタネクザイが出席した。

 スタネクザイは国内の融和を頻繁に提唱。米国平和研究所の客員研究員だった08年に書いた論文では「和平交渉の機が熟したことを複数の事実が示している。包括的で組織化された政治的和解プロセスを開始しなければならない」と主張している。

新外交を模索する民主政権

 今回の会議は提言をまとめて閉幕。日本の岡田克也外相はこの提言をもとに日本政府の今後のアフガニスタン支援策を練ることになる。

 インド洋での給油活動を延長しないと決めた民主党政権は、代わりに最大50億ドルの民生支援を約束。アフガニスタン支援における新しい役割を模索している。タリバンとアフガニスタン政府の和解交渉を主導すれば、これまでアメリカの外交政策に追従してきた日本の外交政策から脱却し、民主党が新しい個性を打ち出したといえるだろう。民主党はアメリカとの同盟関係において、より独立した「対等」の立場を求めている。

 今回まとめられた提言では、日本の果たすべき役割について以下のように書かれている。「アフガニスタンおよびその近隣国において日本が高い評価を得ているという現実をふまえ、日本が他の主要ドナー国とともに、アフガニスタン政府が主導する平和と和解に関するプログラムを支援する中心的役割を果たすことを強く期待する」

 今年7月、ヒラリー・クリントン米国務長官はタリバンとの和解における前提条件を提示した。「タリバンと共に戦っている者の全員がアルカイダを支持しているわけでも、タリバン政権時代の極端な政策を信奉しているわけでもないことを、われわれは理解している」と、ヒラリーはシンクタンク米外交問題評議会で述べた。「タリバンであっても、アルカイダとの関係を絶ち、武器を捨て、アフガニスタン憲法でうたわれた自由で開かれた社会の実現に参画するのであれば、アメリカとアフガニスタン政府は和解に応じる準備ができている」

 しかしアフガニスタン・パキスタン問題の米政府特別代表を務めるリチャード・ホルブルックは11月23日、国務省での会見でこう語った。「これまで米政府とタリバンの間で直接対話の場は持たれていない。タリバンとの直接交渉はしない」

Reprinted with permission from the Cable, 25/11/2009.
© 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中