日米同盟に忍び寄る高齢化の脅威
軍事だけでない日米同盟を
もっとも日本社会の高齢化は、日本とアメリカにとって悪いことばかりではない。高齢化が進むことのメリットの1つは、日本の再武装に対する近隣諸国の警戒感が弱まること。そうなれば、かつて戦火を交えたフランスとドイツが結束して欧州統合を推し進めたように、日本と中国が手を携えてアジアの地域統合を前進させる道が開けるはずだ。
実は、日本の弱体化はアジアに好ましい影響をもたらす可能性もある。国力が以前より弱まった国は、ほかの国々と協力して共通の課題に対処しようとするのが普通だからだ(ただし中国と韓国が日本に対する昔の恨みを晴らそうとすれば、このシナリオは成り立たない)。
アメリカがなすべきこともたくさんある。まず必要なのは、日米同盟の新しいあり方を見いだすことだ。弱体化するといっても、日本が豊かな国であり続けることは間違いない。日本が(その気になりさえすれば)世界に貢献できることは多い。アメリカ政府は日本の背中を押して、世界に目を向けさせ、まだ余力があるうちに何らかの明確な国際的責任を担わせるべきだ。
日米はアジアと世界全体の共通の利益を考えて行動しなければならない。アジアの国々に民主主義を定着させ、地球環境に配慮した持続可能な発展を実現するために人材を提供することも重要だし、経済・通商問題に関する話し合いを再び活性化させることにも意義がある。
日米同盟をもっと「多角化」して、軍事問題以外の広い意味での安全保障問題への取り組みを強化することも避けて通れない。感染症対策、インフラ(社会経済基盤)の提供、大量破壊兵器の拡散防止などは、日本が大きな役割を果たせるテーマの一部だ。
アジアの地域統合を推進せよ
日米両国は、アジアの地域レベルの機関の強化にも協調して取り組まなければならない。アジアの地域統合が進めばアメリカとアジアの関係、アメリカと日本との絆が弱まりかねないと恐れる見方が日米には根強いが、そうした発想はあまりに近視眼的だ。
2国間の枠組みと多国間の枠組みは、二者択一の関係にはない。多国間の枠組みを充実させることができれば、国同士の絆が強まり、地域の安定が増し、問題解決が後押しされる。
地域レベルの多国間の枠組みを強化する作業には、いま着手すべきだ。多国間の国際機関・国際ルールづくりに日本がまだ比較的大きな影響力を発揮できるうちに取り掛からないといけない。
中国が力を付け、日本の国力が弱まり、アジアの地域統合が進めば、アメリカの日本に対する関わり方も根本から変わらざるを得ない。高齢化の進んだ日本とアメリカがパートナーであり続けるためには、両国が今すぐにその新しい未来に向けて準備を始めなければならない。
Reprinted with permission from www.ForeignPolicy.com, 8/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.